投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 0 「とある日の保健室」 2 「とある日の保健室」の最後へ

「とある日の保健室その1」-1

「だるい……」
だから俺は行く。
「眠い……」
だから俺は行く。 愛しき保健室へと、至福を求め。
俺は橘達也。一応高校生やってる。一応、と言うのは、普段から俺は、学生やってる自覚あるのか、というほどサボり癖があるからだ。
授業を最後まで眠らずに受け切った事はない。自信を持って言える。
ただ、敵は教壇にあり!なわけで、先公が俺を叩き起こす。殴る、蹴るは当たり前。酷い時はチョークが飛んで来る。アレが一番怖い。制服が汚れるからな。
ま、そんな時はここ、保健室に来て、無害なサボりを実行するのが、俺の日常。
「先生〜……あれ、いないの?」
保健室の戸を開けると、そこに広がるは静寂。いつもならば、保健室の先生こと、双葉薫先生がいるのだが……
「会議か何かか?」
双葉先生は俺の味方だ。だるいから休ませて、と言えば、
「しょうがないわねぇ……」
と、休ませてくれる。最高の美人教師だよ、ホント。
「ま、いいや。勝手に休ませてもらいますよーっと」
俺はベッドに歩み寄る。カーテンを開き、柔らかい羽毛布団へとダイブ。お、あったけ……
「きゃあ!」
え?
「ななな、何するんですか!?人を呼びますよ!?」
少女が毛布を握り締め、俺に金切り声で叫んだ。
やばい、先客がいたのか……。
「あー……悪い。まさか人がいるとは思わなくて……」
とりあえず弁解をはかろうとしたところ、
「嘘!私を襲うつもりだったんでしょ!」
と、自意識過剰な少女は俺に詰め寄る。
ま、よく見れば可愛い女の子だ。肩まで伸ばした黒髪なんぞ、けっこう映えているし。
それはそれとして。
「違うって。少しは信じてくれよ」
やはり誤解されたままというのは気分が悪い。どうにかしなくてはいけないのだが、いかんせん、自分で言ってて説得力がない。言葉では無理がある。双葉先生、速く戻らないかな。
「男の人は皆、獣だもの!信じられるわけが無いわ!」
あー、うるせー。
「どうしたの?」
と、そこに少女と同じく肩まで髪を伸ばした、艶のある黒髪の女性が現れた。
双葉先生である。
「先生!この人が私を犯そうと!」
おいおい、犯すってあんた。
「犯すだなんて……もう」
双葉先生の顔が朱に染まる。そう言えば、双葉先生はこういうネタが苦手だったっけ。
「橘君、強姦はちょっと……」
真っ赤な顔で、双葉先生は俺にそう言った。手を組んでもじもじとしながらも。
「双葉先生……俺はそんな事しませんし、してません。そこの女が勝手に勘違いしただけですよ」
そう言うと、
「そうよね……」
双葉先生は、あっさりと信じてくれた。長年の付き合い(保健室の)だし、分かってくれているのだな。
「ねえ、星野さん、あなたの勘違いじゃないかしら?私の知る限りじゃあ、この子はそんな事はしないわよ」
双葉先生は、その星野とかいう奴を諭したが、
「……分かりました。もう教室に戻ります」
明らかに分かっていない、納得していない表情で、保健室を出た。
俺は少し気になった。と言うか、不安になった。パターンっつーか、恒例っつーか、こういうのは翌日、何故か全校生徒に触れ回っているだろ?
「怖いな……」
つい口に出してしまった。双葉先生がこちらを見ている。
「橘君、何が怖いの?」
「あ、いや……なんでもないです」
「ふぅん……ところで、今日は休むの?」
あの女、星野のせいで、そんな気分ではなくなった。何か、帰ってゴロゴロしたい。
「先生、早退します」
「分かったわ。でもね、橘君。真面目に授業を受けないと、進級できないわよ」
何気に恐ろしい事を……


「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 0 「とある日の保健室」 2 「とある日の保健室」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前