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赤兎馬 〜呂布との出会い〜
【歴史 その他小説】

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赤兎馬 〜呂布との出会い〜-1

赤兎馬。三国志を語る上で外す事の出来ない馬ではないだろうか?
赤い毛並み。他の凡馬とは比べ物にならない脚力とスタミナは一日に千里を走ると言われている。
彼が生まれ落ちたのは中国の内陸部に位置する西涼州の小さな村であった。
父はシルクロード貿易によってもたらされた汗血馬、母はモンゴルの遊牧民が好んで乗っていた最良馬。
そんな有能な血を受け継いだ彼は『赤兎』と名付けられ、幼いころからその恐ろしい才能を周囲に見せつけていた。
それがいけなかった。
『赤兎』の名前は瞬く間に西涼中に広まり、ある男の耳に入ってしまったのだ。
おりしも黄巾の乱が終息を迎えて間もないころ。この頃台頭していた強欲非道の男、董卓である。
『赤兎』は董卓への供物として贈られた……。


「おお、これが赤兎。なるほどになかなか良い面構えだ」
『なんだ、このきたねえオッさんは? 俺にさわってんじゃねえよ』
「董卓様。御気をつけください。なにぶん気性の荒い暴れ馬にございます」
董卓はふんと鼻を鳴らし「ワシを誰だとおもおておる」と言うとさっそく『赤兎』にまたがった。
『うっとおしいんだよ!! ジジイ!!』
(ぶひひひぃひーん)
「な、お、ああぁ〜!!」
暴れ始めた『赤兎』を止めるすべはなく、董卓は振り落とされた。が、周りに控えていた部下が数人がかりで受け止め怪我をすることはなかった。
「と、董卓様! おのれ、いかに良馬とて董卓様を振り落とすとは!! おい、斬り殺してしまえ!!」
部下の一人が命じて刀を持ってこさせ斬ろうとした。
「待つのです」と一人の男が止めに入った。
「李儒殿、何か考えがあるというのですか?」
李儒は董卓軍の軍師であり、非常に知略にたけた男であった。
「たとえ乗れずとも、車を引かせればよいだけのこと。こんなことでこの良馬を斬るのは良い策とは言えませんな」
李儒は部下達に支えられ立っていた董卓に「董卓様もよろしいな」と言った。
「李儒が言うのだから間違いはあるまい。そのようにせい」
部下達は「はっ」と全員そろって礼をした。
『ここにはしけた奴しかいねぇ。早く会いたいもんだね、俺が乗せるにふさわしい男によ』


赤兎馬の願いは以外と早く叶った。
「くそう。あいつさえ居なければ」
董卓は悩んでいた。
荊州の刺史、丁原の養子である呂布の事である。
「あいつにこちらの軍はかなりの深手をおわされた、なんとかせねばなるまい」
「董卓様、私に良き考えがございます」
「誰だお前は?」
「李粛にございます。私は呂布とは同郷のよしみがあります」
「して、どんな策があるのだ?」
「呂布は力は強いが頭の方はからきしです。その上、貪欲で手土産でも持って行けば、きっとこちらに寝返りましょう」
自信たっぷりに話す李粛をみて董卓も乗り気になった。
「で、何を持って行く? 金か? 女か?」
「いえ、違います」
李粛は一呼吸ため、切り出した。
「赤兎馬です」
董卓はその言葉に腹を立てた。
「ならん! あの良馬は誰にもやらん。最近やっと乗れる様になって来たのだ」
董卓が李粛を下がらせる様に言おうとした時、李儒が話を聞き付けてやって来た。
「董卓様、李粛の策は真に良い策です。どうか再考のほどを」
「ならん!」
「董卓様! 天下と、たかが馬一頭、どちらがお望みなのですか!」
「……、いいだろう。呂布に赤兎馬をやれ」
李粛は深々と礼をすると、きびすを返してさって行った。


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