Students 4th two-2
放課後、道場に向かう途中の渡り廊下からもう一人のルームメイト、鳴海真子都を見た。影で「遊び魔」と囁かれる程男関係がだらしない真子都。今日は高等部特進科の男子と「遊んでる」ようだ。
―いつもの淫らなお遊び。
真子都は好きだけど、ふしだらなトコは未だに好きになれない。いくら動物的本能って言っても…イカガワシイわよ。
真子都と男は渡り廊下に居る私に気付く様子もなく、木々の茂みで抱き合っていた。まぁここからだと花壇が邪魔であまり見えないけど…、でもまるで、まるで獣だわ。
お互いを喰い尽くすような野性的な接吻、戒めるように絡み合う腕と足、快感に悶える目。なんて淫らなの、なんていかがわしいの、なんてふしだらなの、なんて…、なんて…。
気持ちが悪くなって駆け足で道場に向かった。
ダメ…。アレは真子都じゃない。いつもの小さくて天然でホワホワした真子都じゃない…。男を誘う牝そのものだわ。目だって……、まるで悪魔のように男を見下して…。
これ以上何も考えたくなかった私はすぐに胴着に着替え、邪念を振り払うように一心に刀を振った。
今日の練習は身にならない。わかってはいたけど、私はこの日本刀部の部長。試合も近いこの大事な時期に無責任なことは出来なかった。
「木桜先輩、大丈夫ですか?」
終礼の儀が終わり声を掛けてきたのは、二年男子部員の総代、燻瀬剱。
「…声掛けたくなる程乱れてた?私」
私は端で汗を拭いながら、燻瀬に言う。部員には鬼部長として叩かれているのを知っている。気安く後輩が話し掛けないこと位わかっていた。
「ハイ…とても。」
恐れを隠す為の笑顔?それとも気兼ねしてる笑顔?どっちにしても私のイライラを触発させる。―わかってるっつのよ。
「そう。悪いわね…ちょっと落ち着くまで待って、もう一稽古していくことにするわ。」
八つ当りなんかしないように気を付けて、これだけ言うのが精一杯だった。剱は小さく礼をすると更衣室に戻っていった。
―邪念に捉われている
昔から父に咎められたなぁ。
私は道場の真ん中で静かに正座し、黙想する。
そして、刀を握った―。
何時間経っただろう。
ただ刀を振り回すだけなんて、私も荒くれの猛獣と同じだわ。そんなことを思いながら真っ暗な更衣室に戻った。
「お疲れ様です、木桜先輩」
電気を付ける前に、後ろから聞こえた声に驚き、振り向いた。
「…いぶ‥せ?」
立っていたのは燻瀬と、同じく二年男子部員の橘、神部の三人だった。
「…何?後ろから突然声を掛けるなんて無礼よ。」
心臓がまだバクバク言っている。何なの。何で居るの?もう終わって三時間以上経ってるのに…。三人は躊躇せず私に近づいてくる。
「先輩、悩んでいる時はもっと頭を刺激して気分を軽くさせなくちゃイケませんよ。」
燻瀬が恐ろしいコトを口にする。
「な…」
「俺らに任せませんか?」
私の言葉を遮る神部。
「ねぇ…?先輩!!!」
「ちょっと!?嫌ぁっ!!離しなさいよっ!!!」
神部にいきなり両手を持ち上げられた。私は反射的に足をバタつかせる。
「トモ、足」
燻瀬が橘に命令して私の足も諫めさせた。
「ちょっ…あんた達、止めなさい。こんなことして、許されると思ってるの!?」
手足の自由を奪われた私は口で対抗するしかなくなる。燻瀬はニヤリと冷たく微笑み、私の首筋に口を近付けてきた。
「許さなくてもイイよ…せんぱい」
ビクッ―
全身に悪寒が走った。
怖い!!―嘘でしょう?こんなの…、ねぇ!!
燻瀬の舌が生き物のように、私の首筋をなぞった。
「んっちょッ…やぁ…」
「先輩、可愛い声」
耳元からは神部が囁く。
三人はすぐに私を床に押し倒した。同時に、燻瀬が胴着の着物を引き剥がし、私は胸を曝け出すこととなる。
「いやぁっ!!!やめて!!やめなさいよ!!」
必死で叫ぶ声は虚しく轟く。足元では、橘が足をM字に大きく開かせながら、袴をずるずる剥ぎ取っていく。止められない。とてもじゃないけど敵わない。
「ハイ先輩。上のお口はこっち。」
「えっ…ンンッ!!?」
神部の唇が私の口を塞いだ。すぐに舌が激しく絡んでくる。ざらざらした他人の舌の感触は私の舌に強く纏わり付く。
「僕たちの快楽に溺れて何もかも忘れてくださいね」
燻瀬はそう言うと、自分の目の前にある私の胸に貪り付いた。