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世界の中でたたずむ、人
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世界の中でたたずむ、人-3



「タケダ君はどうなの?」
と、私は聞いた。彼の意見には興味がありすぎる。
「僕?」
と彼は言ってから、またフムッと考えた振りして黙った。

―鈍感な人。と、私は思う。決して直接的な表現ではないけれど、彼ぐらい頭が良ければわかるはずなのに。

「そうだな。僕の場合は―想い人、かな」
唐突に、彼はそう言う。 前触れは、いつも無い。
「それは?」
と、私は聞いた。彼よりも、少し大きな声で。
「つまり―僕が心を寄せている人、だね。種類は無いよ。形は様々だ」
そう言って彼は、ボンヤリと空を見た。何かを見てる様でもあったし、何も見てない様にも見えた。
「それがタケダ君が世界にいる理由?」
「そう。僕の第一次人生の終わりはもうすぐだからね。大切な人であったり、尊敬する人であったり。また、信頼を寄せる人であったり…愛する人であったり。そんな人達が、僕を世界に繋ぎ止めてる。そう思うよ」
彼はそれだけ言う為にここに来たかの如く、すがすがしい笑顔で言った。
そして優しく
「僕の言ってる事、わかる?」
と、言った。

「わかるわ」とだけ、私は言った。


◆ ◆ ◆

その日の夜、私は半年ぶりに日記を開いた。今年の始めに買ったのだが、ほとんど不定期で使っているので空白ばかりだ。
そして今日あった事を、一つ一つ丁寧に思い出しながら、書いた。
私はあまり文章を綴るのが、得意ではない。 それでもできるかぎり、思い出せる限り書いた。




屋上の景色。
恋。
空の色に、雲の形。
タケダ君の事。
決まって言う台詞の事。
愛。
〈世界〉の話。
私を世界に繋ぎ止めている物。
慈しみ。
彼を世界に繋ぎ止めている物。
つまり―と言ったタケダ君の声。
〈星〉の話。
想い人。
質問の理由。

世界の中にたたずむ、人。

静寂の中の恋。
第一次人生の終焉。
決まり事。
お礼。
〈人〉の性。
鈍感な人。
猫と戯れる、絵描き。
空白を埋める言葉。
〈小さな幸せ〉を感じる私。

すがすがしく笑った、君。


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