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世界の中でたたずむ、人
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世界の中でたたずむ、人-2



彼はその日〈星〉について1時間ばかり話し、その後に〈地球〉の事を10分ほど語り、最後に〈世界〉の話をした。
どの話も突然始まり、前触れも無く終わりをつげた。彼自身が終わらせる場合もあったし、自然に終わった話もある。
しかし最終的には、“何を話したか”は重要では無かった。私達の間にある、空間的な何かの為にしているのであって、内容はともかく、それ事態が意味を持つものなのだ。
少なくとも、私はそう思っている。そう思わなければ、残骸すぎたのだ。

「つまり―」
と、彼は良く言った。口癖という程ではないが、彼はその台詞を使う事が多かった。 そして話の最後に必ず
「僕の言ってる事、わかる?」
と、言う。
私はそうした決まった台詞を聞くのが、たまらなく好きだった。素直に彼を感じる事が出来たし、何よりも、私だけの秘密に思えて心地よかった。
大した事では無い。
しかし〈人〉という生き物は、そういった〈小さな幸せ〉を、見つけるのが上手な生物だ。

私はそれを、誇りに思う。




〈世界〉の話が始まってから、たぶん1時間ぐらいが過ぎた時に、彼は言った。
「世界と君と僕と。その他諸々の何か達を繋ぎ止めているのは、なんだと思う?」と。
私はその言葉が、私に対して言った言葉なのか、それとも話のつなぎとして言った言葉なのかが、掴みかねていた。
「つまり―この世界にいる僕らが、世界にいられる理由は?って事」
そう言って一拍置いてから、彼は再び口を開いた。
「僕の言ってる事、わかる?」

この時点で私は、それが私に対する質問である事を理解する。そしてどうじに、彼が言った台詞を整理し直し、頭の中で再構築を果たす。
「わかるわ」と、私は言った。
これは、答えを出すまでの、空白を埋める言葉である。

そうでもしない限り、彼は何処かへ消えてしまいそうだったのだ。




「恋をしているの」と、私は言った。
「誰が?」と、それに対して彼は言った。
「私が、よ」
そう言って空を見て、雲を見た。雲のラインをなぞった後、また青い空を見た。
質問に対する答えを出す。
それはつまり、私と彼の繋がりである。
「他の何かは知らないけど、私を繋ぎ止めてる物はそれ」
「恋をしてるって事?」
と、彼は言った。幾分、私より大きな声で。
「そうよ。恋、愛や慈しみ。そんな感情」
フムッと彼は言って黙った。フーッとため息をついて私は黙った。
そして彼は、私が言った言葉を反復する。

「恋、愛、慈しみ、かぁ」


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