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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第6章-3

「やっ、やめてっ!馬鹿、やめろぉ〜!!」

じじじ…獣姦なんて!

いや、本当の姿は獣じゃないんだけど、でも今は獣で…とにかく駄目!

「いやぁーっ!」

もがく私の顔に、狼の顔が接近する。

ぺろん。

「…へ?」

自由になった体を起こすと、私の足もとで、ゆっくりと人間に形を変えていく狼の姿。痛みの伴う変身に、顔をゆがめる飃がいた。

「あれ・・・何で?」

人間の姿に戻った飃が言った。

「よくも散々馬鹿呼ばわりしてくれたな!」

暴れたせいでぼさぼさの髪の毛。そして引っかき傷。不機嫌そうな顔。

「だって、したいって言った!!」

必死で反論する。

「口付けの話だ!犬の言葉にそんなものは無いからああ言うしかなかったんだ!」

「ま…ま…まぎらわしいのよ!」

まるで、魔女に呪いをかけられた王子様の話。お姫様の口付けで、人間に戻る…でもそれじゃあまるで…

「茜が、魔女みたいじゃない。」

それを聞いていた飃が言った。

「否、あの娘に特別な力があるわけでは無いと思う。今回の事は…そう。己の勘違いだ。お前たちの言葉でなんと言ったか…虎馬だな。そのせいで人間に戻れなくなったのに違いない。」

「虎…ああ、トラウマね。でも、なんの…?」

飃は答えなかった。彼と私の間の何も無い空間に、記憶そのものが存在しているかのようにじっと、意識を注いでいた。気のせいか、一瞬後に「殺気の波が来る気配」を感じたような気がした。必死でそれを抑えているような、そんな感じ。

「いや。時が来たら、話すさ。とにかく、今度のことは気のせいだ。忘れてくれ。」


そう言った飃の顔は、心なしか青ざめているようだった。それを振り切るかのように、2、3度頭を振って、私のほうを見た。心配はするな、という警告と命令を含んだ強い眼差し。わかったわよ。立ち入り禁止ってわけね。


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