甘い眩暈-2
「俺、唇が性感帯なんだよね」 帰り道も何度かキスをされ、アパートを通り越した先の駐車場に連れていかれた。 白い車に背中を優しく押しつけられ、唇をひたすらに奪われる。 「んっ…ぁん」 思わず漏れてしまう甘い吐息。 「なんかやらしーね」 「…ゃん…」 何もかもが甘いんだ。 溺れそう、でも溺れてしまってもきっと彼は助けてくれない。 「おっぱい、触ってもいい?」 悔しくて、「だめー」と答えてみる。 苦笑い一つ残しただけで、想良はキスを再開する。 結局、耐えられなくなったのは私。 「いいよ、触って」 悔しいけど、今は何も考えたくない。 彼の手が服ごしに左胸に触れた。 「ん…」 緩やかな波が私を襲う。 想良の手が私の背後に回り、パチンと胸の締め付けを解く。 反動で少し揺れた胸は、今度は彼の表情、声、温度、指のすべてに締め付けられていく。 「ぁん…っく」 我慢できずに漏れる私の切なさを聞きながら、彼の指は胸から腰をたどる。 「触られるのも初めて?」 「触られたことは、あるよ」 多智とは最後まですることなく別れた。 またよみがえるアイツの顔。 振り払うかのように、私は想良の首に抱きついた。 「ん…」 自分でもあまり見たり触ったりしたことのない場所。 やはり気持ち良さよりも、違和感の方が強い。 でも想良は優しく、焦らずに私を解してくれた。 「ねぇ、今どのくらい指入ってるの?」 地面に立て膝を付きながら、彼の耳元で尋ねる。 「第二間接くらいかな」 そんなに、と心の中で驚いた。 今まで優等生をやってきた私には、彼が与えてくれるすべてが何だかイケナイことのような気がした。 「舐めてくれる?」 ここで?なんて思わないくらい酔ってた私は、恥ずかしがりながら頷いた。 フェラは何度もしていた。 多智に教わった。 「ん…」 想良のを口に含み、目を閉じたそこにいたのは、多智だった。 中性的な容姿や、声のトーンや、細身の体型、私が口に含んだそれまでも、そっくりだった。 私は頑なに目を瞑り、なけなしの知識で彼を気持ち良くさせた。 「…っ、出すよ」 口いっぱいに広がる、想良の味。 それを感じながら、男ってみんな一緒なんだって、どこか冷めた自分かいた。 「吐いていいよ」 近くの茂みに吐き出したものの、少し飲んでしまった。 嫌悪感はない。でもこみあげてくる暖かさもない。 「ありがと」 そう言った彼の後ろを新聞配達のバイクが通る。 急に現実に戻る二人。 気付けば空も白みはじめでいた。 「帰ろっか」 みんなには語ってたって言おうね、とささやく彼。 二人だけの秘密。…そんな甘い響きを感じてるのは私だけ。 だめだよ、好きになっちゃ。 本気になったらいけない人なんだから。