ツバメJ-3
ピリリリリリ……
『ん……』
ピリリリリリ……
着信音に気付き、飛び起きた。
いつの間にか眠っていたらしい。
時間はまだ夜八時を過ぎたくらいだった。
『誰だろ』
携帯を開くと、久し振りに見た名前が表示されていた。
『もしもし』
「……よう、元気?」
『桜実くん……』
「今、椿芽ちゃんの家の前なんだ、話せない?」
約一年振りに桜実くんの声を聞いた。
どうしたんだろ。
もしかして、告白の返事を聞きにきた?
どうしよう。桜実くんへの返事なんて考えてなかった。
『今から行くね』
「うん」
電話を切り、慌てて髪を梳き、化粧を直して外に出た。
桜実は、少し雰囲気が変わっていた。
なんて言い表せばいいかわかんないけど。
『……久し振り』
「久し振り、急にごめんな」
『いいの、それよりどうしたの?』
「……えっと」
『……』
しばしの沈黙。
桜実が重い口を開いた。
「この間……ってかもう一年になるんだけど」
『うん』
「あのときはごめん」
桜実くんは頭を下げた。
やっぱりあのことか。
あのときの告白は驚いたけど、今は気にしてない。
誠実な桜実くんにあんなこと言われたときは正直、恥ずかしかったけどうれしかった。
もちろん、今でもあのとき燕を否定したことは驚いたけど。
あの日、駅に鷹くんがいなかったらどうなってたんだろう。
そんなことを考えていると、桜実くんは続けた。
「もうひとつ、話があるんだ」
『え?』
そんなこと思っていなかったので驚愕する。
「……燕のことなんだ」
『……!』
さらに驚愕。
「……昨日、燕と話したんだよね」
『……うん』
「あいつ、何だかんだ言っても椿芽ちゃんのことずっと引きずってるからさ」
……あたしだってそうだ。
「あいつに聞いたんだ。椿芽ちゃん」
『……?』
「あいつね、椿芽ちゃんとまだ付き合ってるときから、もう合コンしてなかったみたい」
『え!?』
思わぬ一言に驚いた。燕が?ありえないありえないありえない!
「本当だよ、あの燕が」
『……正直、一番驚いちゃった』
「はは、俺も。でも、本当にあいつは変わろうとしてたんだよ」
『……』
「君のために」
『!』
手が震える。
どうしよう。
ひどいこと言っちゃったし、それがいやで別れたみたいなものなのに。
燕は頑張ってくれていたんだ。
あんなに大好きな合コンをやめてまで、一緒に……