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ツバメ
【大人 恋愛小説】

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ツバメJ-4

ポロッと、涙が落ちた。
涙が落ちたことに、自分が泣いたことに気付かず、ひどく動揺してしまう。
それでも際限なくポロポロと涙は落ちる。流れるというより、ポロポロと足元に落ちる。。
「燕はさ、自分の気持ちに正直になってたんだよ?」
『……うん』
「でも、椿芽ちゃんが他の男といるのを偶然見ちゃったらしくて」
偶然?あのときは偶然じゃないよね。
じゃあその前に見られてたんだ。
「それを見てあいつは悩んでた」
『……』
「それでね、我慢できずに会いに行っちゃったんだって」
『……』
知ってる。
「そしてその男と二人で話す機会ができたんだって」
『うん』
「話は簡単なものだったらしい。椿芽ちゃん、話の内容は聞いた?」
『……聞いてないよ』
「そっか。まあ、その男が一方的に言っただけだったんだけど」
ああ、やっぱり。
鷹くん、燕に文句を言ったんだ。
「じゃあ、話すね」
桜実は頭の中を整理するような素振りを見せると、ゆっくりと話し始めた。
「えっと……“お前、椿芽の元カレだろ。俺はな、まだ椿芽とは付き合ってない。だが、付き合いたいと思ってる”」
『……』
「“お前と椿芽がなぜ別れたかは知らないがな、お前、椿芽の気持ちに応えてなかっただろ。あいつは、すごく寂しがってたんだよ”」
桜実くんは、鷹くんの言った内容を淡々と口にする。なんだか、鷹くんが言ってるみたい。
「“お前、まだ好きなんだろ。だったら、椿芽に謝れよ。大切にするって誓えよ”」
『……え?』
どういうこと?
「“俺も男だし、椿芽が好きだ。だけどな、お前と戻って椿芽が幸せになるんなら、少しだけ待ってやる。一刻も早く謝れ”」
『うそ、そんな……』
「“それでもお前に意気地がないなら。俺はお前を許さないし椿芽は俺が幸せにする”」
『……』
「……はあ、我ながらよく覚えてるもんだな。それだけ俺も衝撃的だったってことか」
桜実は苦笑いした。
『本当なの?』
「本当だよ」
『……』
「でも、あいつはまだ悩んでるみたい」
『……』
「だから……もし椿芽ちゃんが……燕のこと想ってるなら……あいつのとこに行ってやってくれ」
『……』
そんなこと言われても……
「じゃあ、俺はそれだけだから」
桜実はすぐに振り返り、走り出した。
『桜実くん!』
「……」
『ありがとう!考えてみる!』
桜実くんは振り返らず、手だけを振ってそのまま見えなくなった。


桜実くんの話を聞いて、ひとつだけわかったことがある。

鷹くんのこと、驚いた。ますます鷹くんが好きになったかも。


けど。


あたしは燕が好き。



そしてあたしは、よく考えもせずに走り出した。


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