恋に恋するお年頃!?B-1
「………ということからも、日々の絶え間ない努力が大切だということが、君達にも………」
(はぁ〜。
校長先生、話長すぎ……)
「私さぁ〜、話が短い校長だったら、生徒からの人気も絶対上がると思うんだけど……。」
雅美の言葉に、恵は吹き出しそうになるのを慌ててこらえた。
こんな所で吹き出したりなんかしたら、全校生徒の注目を浴びてしまう。
明日からは、待ちに待った"夏休み"。
今日は終業式。
全校生徒が体育館に集まり、いつ終わるともしれない校長の話を、右から左に聞き流している。
恵と雅美は、体格もほぼ一緒で、クラス毎に整列するときなどは、前後にいることが多い。
美智子は、2人よりも少し背が高いので、離れた位置になってしまうのだが…。
恵はキョロキョロと、教師の中から佐藤の姿を探す。
恵の視線に気付き、佐藤がこちらを見る。
目が合うと、恵は嬉しくなり思わず小さく手を振った。
返ってきた佐藤からの反応は、声を出さずに口の動きだけでの「バーカ」。
だが、口元には笑みが浮かんでいる。
そんな2人の様子を隣で見ていた雅美は、
「…なんかさぁ、もう告白しちゃってもいいんじゃないの?佐藤も満更じゃないって感じだし。」
なんて、恵の耳元で囁いてくる。
佐藤ばかり見ていた恵は、雅美の急な行動と、話の内容に顔を赤らめるのだった。
教室に戻ってくると、担任の牧瀬から成績表が返される。
隠し事なしの恵達は、もちろん成績表も「せ〜の…」で見せ合う。
それぞれの結果は、予想通り。
10段階で、
美智子は英語が9。
雅美は体育が9。
恵は数学が10。
それ以外は、似たり寄ったりな感じ。
得意なものはとことん極めるが、それ以外には関心があまりないのも3人に共通する事だった。
「明日から、寝坊が出来るぅ〜」
伸びをしながら、嬉しそうに言う美智子。
「高校最初の夏休み、いっぱい遊ぼうね〜」
雅美は手帳を開きながら、予定確認に抜かりない。
恵はというと……明日からの休みに、浮き足立っているクラスメイトを後目に浮かない顔だ。
「メグ?大丈夫?やっぱり佐藤に会えないの寂しいんだよね?」
美智子に覗き込まれ、無理に明るい表情を作るが上手くいかない。
「…ううん、大丈夫。休み中も、数検の勉強は見てくれるって、先生言ってくれたし。」
そう。
確かに、佐藤は「夏休みでも、だいたい毎日学校に来てるから、わからないところがあれば、聞きに来てもいい。」と言ってくれた。
(……でも)
と、恵は思う。