年上の事情。‐4-1
「はぁー‥よしっ!」
大丈夫、ダイジョウブ‥
そう言い聞かせて、ミーティングルームの扉をノックした。
鳴海くんを呼びに行ったはずのあたしを立花くんが呼びにきて、気合いを入れて部屋に戻ったものの片山の姿はそこにはなかった。
あれ。
気が抜けてしまう。
「先輩、大丈夫ですか?」
香ちゃんが心配そうに聞いてきた。
なんで?
大丈夫に決まってるよ!
‥そう言いたいのに笑顔を見せるしかない。
頬がピクピクした。
立花くんの視線も感じる。
祝さんと鳴海くんはきょとんとしている。
ダメだ‥何動揺してるんだ。今までちゃんと出来てたじゃないか。しっかりしなきゃ‥
「五十嵐!」
急に呼ばれてどきっとする。声の主は部長だ。
部長は他の人に聞こえないように、あたしの真横に立ち話し始めた。
「お前、アイツに会うのは久しぶりか?」
「‥はい」
「ちゃんと挨拶してこい。さっきのは‥まずいぞ」
あっ‥
さっき片山に会ったとき、あたしは急なことに動揺し目も合わせずに挨拶をしただけだった。「元気か?」の質問にも答えず。
「片山、今日明日プレゼンがあってな、こっちに来てるんだ。今、ミーティングルームにいる。
コーヒーでも持っていってやれ」
部長はポンとあたしの肩を叩いた。
そして冒頭に戻るわけだけど――
石原部長と片山は年は違うものの同期入社である。
しかし、今では片山が上司にあたる。4年大卒と短大卒の差はやはりあるようだ。2人はあまり気にしていないみたいだけど。
気合いを入れてミーティングルームに足を踏み入れると、そこには片山が1人たくさんの資料に目を通していた。