僕とお姉様〜ファースト***は***の味〜-3
「あー可愛い子でした!純粋そうな!同じ高校生だし」
「な…っ、あーそう!良かったじゃん、山田にも春が来たんだ」
「はいはい、そーですね。ていうか、あんたには関係ないでしょ」
言い合うのが嫌なくせに言い返してしまう。何とかこの状況を打破したくて部屋を出るが、お姉様も後からついてくるせいでなかなか治まらない。
「関係ないって、確かに関係ないけど?高校生の恋愛なんか幼くて興味ないし!」
「だったら黙っててもらえます!?これは僕の問題なんで!!」
泥沼化する言い合いを一瞬止めたのは玄関を開ける音と、
「ただいまー」
ひばりちゃんの明るい声だった。
階段の途中でもめている僕達を不思議そうに見上げてる。
「二人ともどうしたの?」
「いや、別にー」
「ひばりちゃん、聞いて!山田が今日学校でね」
「おいっ!!」
僕が止めるのも聞かずお姉様はペラペラと話し始める。
「――というわけなの!どう思う!?」
ただひばりちゃんの反応はあっさりしたもの。
「うん、…で?」
「で?って…、山田が告白されたんだよ?びっくりしない?」
「しないよー、だって強君って中学校の時から人気あったし」
それを聞いてすぐに僕を見たお姉様から反射的に目を反らした。
「強君は真面目なタイプじゃないのに頭いいし、しかも足が速いから体育大会の時なんか女子がキャアキャア言っててね、あたし幼なじみなのを羨ましがられたもん」
悪気のない無邪気な暴露。僕はちょっとだけお姉様の反応に期待していた。もしかしたら、少しは嫉妬してくれるんじゃないかって。
でも現実はほど遠いもの。
部屋に戻ってからもお姉様のからかいは止まらなかった。
「へー、山田モテるんだー、ふーん?」
何となく感じの悪い態度は、一番言ってほしくない言葉を投げかけてきた。
「試しに、付き合っちゃえば?」
「…は?」
「可愛い子だったんでしょ?ラッキーじゃん」
何のつもりか知らないけど、笑ってそんな事言うなよ。
本気でも冗談でもあんたにだけは言われたくなかった。
試しに人と付き合うような男だなんて思われたくなかった。
そう思われてるなら、本当に付き合ったって…
「…そうしよっかな」
「…え?」
「本当に付き合っちゃおうかな」
「え!?」
「あー、そうしよ!!そのうち好きになるかもしれないし、断ったらもったいないし!」
半分やけ気味の発言だが、それも僕にとっては小さな賭けで。
何か言って。
僕を気にしてるような何かを言って…
「…いいんじゃない?」
ことごとく期待は裏切られる。
肯定かよ。
こうなってしまうと後には引けず、口だけが良くない方向へ暴走していく。
「じゃあ明日返事しよっと!!」
「明日と言わず今からメールしたら!?」
「あー、それもそうだな!!早い方がいいもんなぁ。いい事教えてくれてどうもありがとう!」
「どういたしまして!!」
こんな筈じゃないのに…、気付けば心にもないセリフを次々と吐いてしまった。
最悪な展開だ。