年上の事情。‐3-3
「俺‥学生のとき年上の人付き合ってたんです」
まさか鳴海くんがそんな話をしだすとは思ってなかったのでびっくりした。
「‥大学の2年先輩だったんですけど、先に彼女が卒業して、それからあっさり振られちゃいました」
「そうなんだ‥」
なんとなく、何も言えず、というか彼の言葉に自分を重ねてしまう。
「俺年下だし、童顔だし、ただでさえ彼女にかわいいかわいいって言われてたから‥少しでも大人に見せようとしたんですけど、無理でした。
‥好きな人ができたって。相手はしかも5つも上の大の大人でした」
なんだか彼のことを今までかわいいと思っていた自分を心のなかで責めた。
「‥あたしもさぁ、年上の人付き合ってたことがあるんだ。
自分が子供に思えて仕方なくて、すっごく背伸びしたときがあったけど、全然届かなくて。
でも今思うと背伸びなんかしなくて素直に自分の気持ち伝えとけばよかったかなって思うよ」
へぇーと目を丸くして彼は聞いてる。
「俺からしたら五十嵐さんはすごく大人です」
「そりゃあもう、26ですから」
笑い合い、あたし達はまた外の景色を眺めた。
彼がなぜあたしに話したかは分からない。
あたしも彼に、香ちゃんにも話さなかったことを話したのかは分からない。
ただ、すごく話しやすかった。この空気が居心地がよかった。
「あっ、いた!」
その声に振り替えると、立花くんがいた。
あ〜そうだった!
「もぅ遅いから呼びに来ましたよ〜」
「あぁごめん。鳴海くん、部長きたから戻るよ」
すっかり話し込んで忘れてた。
鳴海くんは立花くんとすれ違うと「このおしゃべりが!」と言って前を歩いて言った。
あたしも後に続こうとした、そのときだった。
「あ、あの!五十嵐さん、さっきの話‥聞いちゃいました」
あー、そっか‥
でもまあ聞かれてまずい話でもないけど。
彼は続けた。
「もしかして昔付き合って人って、あの、片山さんて人ですか?」
自分の好きな相手のそういうことってピンとわかるものである。
あ、まだ立花くんがあたしを好きなんだと決まったわけではなかったんだ、とそんなことを思った自分が恥ずかしくなる。
あたしは何も言わず笑って見せて歩きだした。