『イジワルな彼〜揺れる思い〜』-1
外に出ると、道の端っこで小山が座り込んで泣いている。
声を掛けようとした時ー‥
男が小山に声を掛けている。見た感じ、知り合いっぽい。何を話しているみたいだが、周りがうるさくて聞こえない。
“何で泣いてるんだ?てか誰だよ、アイツ。”
「ほの‥?」
顔をあげると、そこには幼なじみの《山田朔太郎》がいた。「朔ちゃ…ん?」
「おぉ!どした?」「ゎ、私…もぉ、どうしたらいいか分からな…くってぇ。」「おい、おい!俺が泣かしてるみたいになるだろ?!あぁ〜もう〜朔ちゃんの胸貸してやっから!泣け、泣け!」
「‥朔ちゃん、ありが‥とぉ。」
私は朔ちゃんの胸の中で子供の様に泣いてしまった。
“‥そーゆー事かよ。くそっ…。”
*********「落ち着いたか?」朔ちゃんが打ち上げをしている居酒屋まで送ってくれた。
「‥うん。ありがとう。ごめんね、朔ちゃん。」
朔ちゃんはいつも優しい。子供の頃から本当頼りになる。
「何があったか知らねーけど、あんま無理すんなよ?」
「‥はい。泣いたら、少し楽になった。こんな時間までごめんね。奥様にヨロシク伝えて?」
「オウ!今度遊びに来いよ!真利子も会いたがってるしさ!」
「うん。じゃ、またね!」
“朔ちゃん、ありがとう。さすが私が惚れただけあるよ!”
居酒屋に入ると、もう、そこは、お祭り状態だった。
「…遅くなりましたぁ!」
精一杯の笑顔で中に入る。
「チョット!穂香何してたのよ!!今日はアタシの奢りだから、た〜んとお飲みっ!!!」
社長は、大きな仕事が決まり、安心したのだろうー。いつもに増してハイテンションだ。
“今日は社長のハイテンションに救われるな‥何も考えず、楽しもう。”
「‥はい!」
二時間、私はすっかり出来上がっていた。私はお酒を飲むと、甘えん坊になってしまう‥らしい。(自分じゃ分からないけど。)
部屋を見回すと、嶋田さんが一人でガンガン飲んでいる。
視線に気付いたのか、嶋田さんと目が合ったのに、反らされしまった。
“…いーもん。一緒に飲みたくない人No.1だもん!みんなで楽しく飲んでるのに、【話しかけんなオーラ】が出しちゃってさ。さっさと帰って彼女にお祝いして貰えばいいじゃんか…。”
一方ヒロはー
“目反らしてどうするんだよ!?俺。それにしてもアイツ飲み過ぎじゃねぇか?ろれつ回ってないし…”
「‥社長ぉ!もっと飲も〜う!」
「…穂香、飲み過ぎよ!こっちのお水飲みなさい!」
「やぁ。もっとビール飲むんだもん!」勢い良く体を背いたせいで、残りのビールが穂香のブラウスにかかる。
「ちょっ、穂香大丈夫?‥じゃないわね。誰かこの子送ってって頂戴!」
「らいじょぶ、らいじょーぶ!まだ帰りたくない〜」
「‥俺、送って行きます。」
有無を言わせない雰囲気でヒロは、穂香の腕を掴み、部屋を出るーー
「ちょ‥い、痛い!」
穂香はヒロの手を振り払う。
「…あっ、わりぃ。」
「何なの〜せっかく楽しく飲んでたんに。」
「‥送るよ。」
「一人で帰れる…。」
ハァー
「[‥タクシー拾ってくっから、絶対ここ動くなよ!」
走ろうとした時、ジャケットの後ろが引っ張られる。
“んっ!?”
「‥一緒に行く。」“か‥かわいい”
その時、ヒロはある事に気付くー
“‥コイツ、微妙にブラ透けてねぇか!?…あっ!さっきのビールがー”
「…これ、着てろ!」
「ぅわぷ!?」
目のやり場に困り、着ていた上着を穂香に投げる。