僕らの日々は。〜ある父の日に〜-2
「それでね、私も何か買ってあげようと思うの」
「あら偉いわね。じゃあお金渡しとくわね。二千円あったら足りるかしら?」
「うーん…、千円でいいや」
続・可哀相な男、一葉父。
「じゃあお花でも買って来てあげなさいな」
「オッケー!行ってきます」
「僕は春兄ぃの家で遊んでくるねー」
「はいはい。二人共車には気をつけなさいよー」
その頃一葉父はというと、
「ダメ人間……はは……ダメ人間か……俺にはお似合いだよ……」
まだ何か一人でブツブツ呟いていましたが、一葉母はスルーすることにしました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「こんにちは!花買いに来たよっ!」
「やぁお嬢ちゃん。何が欲しいんだい?」
花屋につくなりそう挨拶した一葉に、若い店員さんが尋ねました。
「えっ?えっと……」
そういえば何を渡すかまだ決めていません。
母の日には真っ赤なカーネーションを渡すものだという事は知っていましたが、父の日には何を渡せばいいのでしょう?
一葉は考えました。
三秒で結論がでました。
母の日には赤い花を渡すんだから、父の日は白い花に違いありません。きっとそうです。
「そこの白い大きな花ちょうだい!」
そういって一葉ちゃんは1番最初に目についた立派な白い花を指差しました。
「千円分ね。花束にしてね!」
店員さんは一瞬驚いたような顔をしましたが、すぐにまた笑顔に戻り希望通り花束を造ってくれました。
「はいどうぞ。少しオマケしといたよ」
「ありがとう!」
店員さんに千円札を渡して、代わりに大きな花束を手に入れた一葉ちゃんはすっかりご満悦です。
これならお父さんも大満足間違いなしです。
大きな花束をゆさゆさと揺らしながら、一葉ちゃんは帰って行きました。
それを笑顔で見送っていた店員はポツリと呟きました。
「それにしても白い菊の花束か。……お葬式でもあるのかな?」
『ある父の日に。』
完