結界対者 第一章-14
「しかし、しかしな……」
沈黙を破ったのは化け物、風洞から漏れる呟き……
そしてそれは、爆風の様な倣叫に変わり
「そんなもん、当たらなければ意味がねぇんだよぉっっっ!」
その叫びとともに、大地を一蹴し、空高く翔び上がった!
開戦!
間宮は更に睨む、空高く舞う忌者(いまわのもの)を!
そして短く「笑止!」と吐き捨てると、その空へ狙いを定め、指先の引き金を引いた!
銃口から一閃!
雷鳴にも似た撃音!
しかし、忌者は、その図体にも関わらず、軽々と身を翻しながら一撃をかわし、空から地平へと迫り来る。
二閃、三閃!
命中せず、やがて忌者は、その拳に光を宿し、空から舞い降りる刹那に間宮めがけて振り下ろした!
ドガガガッ!
大地がえぐれ、間宮は……
間一髪、後方に地を蹴りそれをかわす!
「おらぁ、どうしたっ! 刻の鐘っ! 当たらねぇぞっ!ギャハハハハハハッ!」
「くっ…… この、デカブツなんて速い……」
完全に間宮が追われてる……
ていうかアイツ……
間宮は、いつもこんな事をしてるのか……
「よぉぉしっ! 捕まえたっ!」
忌者の喜々とした叫び声に、俺は反らしかけた視線を再び空へと向ける。
間宮は……
両の腕を忌者に掴まれ、動きを封じられたまま、空に在った。
「間宮ぁぁぁっ!」
思わず叫ぶ!
「くっ…… へへっ、ごめんね、ドジっちゃった…… 柊、早く逃げて…… アナタの力では、まだ無理……」
押さえ付けられたまま、間宮の口元が力無く動く。
そんな俺達に気付いた忌者が
「なんだ…… もう一匹居たのか?」
と体を微かに動かし、こちらを睨む。
「柊っ! 早く逃げなさいっ!」
叫ぶ間宮!
俺は…… 俺は……
どうしたらいい?
さっぱり訳の解らないこの場所で……
訳の解らないアイツに……
間宮に連れてこられた、この場所で……
忌者は更に腕に力を込め、掴まれた間宮の体からミシミシと壊れる音が響く。