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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者 第一章-13

「まさか、そんな…… いや、ちょっと待てっ! 俺やオマエは動いているじゃないかっ!」
「当たり前でしょっ!普通じゃないんだからっ!」

 俺の中では、先程の「時間を戻す」の件ですら決着がついていない、にもかかわらず今度は目の前で時間が止まった……
 しかも、俺が普通じゃないって……

「さあ、来るわよ? アンタはどっかに隠れて見てなさいっ!」
「そんな、適当なっ!大体、何も来ない…… っ?」

 来ていた!

 いつの間にかそれは居た!
 彼女と俺の、ほんの目前に!
 獣の様な大男、いや大男の様な獣!
 一応人並みにシャツとズボンは身に付けている、が!
 それ以外の全てが人並みを外れていて、誰がどう見ても普通じゃない。

「な、なんだこれっ!」
「忌者(いまわのもの)! 私達の敵っ! ……ふん、説明する手間が省けたわよ」

 不敵に笑みを浮かべる、そして

「いいから、隠れてっ!」

と、右腕を凪いで俺を追いやる仕草をすると、彼女は目の前の化け物に向き直り、そいつを恐れる事なく睨みつけた。
 化け物は欝気に見下ろしながら

「なんだ…… 対者か……」

と、地を這う様な声を、その風洞の様な口から漏らす。

「なんだとは御挨拶ね。オマエはこれ以上、一歩も進ませない、この刻の鐘の対者、間宮セリがね!」
「刻の鐘…… だと?」

 化け物は一瞬躊躇う様に止まる、しかし直ぐに「ガハッ」と荒く息を吐き

「ダァハハハハハッ、俺はラッキーだぜぇっ! 時間をイジくる事しか能がない、刻の鐘の対者様がお相手とはなっ!」

と高らかに叫んだ。
 そして息をつくのも惜し気に

「しかも、テメェをぶっ殺せば、結界旋風桜は目の前だぁっ! こいつはラッキーだ、ラッキィィィィィッだぁぁぁぁっ!」

更に高らかに吠える!

 間宮は、大丈夫なのか……
 沸き上がる一抹の不安。
 しかし、間宮は再び不敵な笑みを浮かべると

「本当に…… アナタはラッキーね」

 と右手を胸前に差し出した。
 すると、その右手の先が青白く光り、何か…… 拳銃の様なモノがボンヤリと浮かび上がる。

「貴様っ! ……それはまさか!」
「そう、赦しの短筒。 こいつで苦しむ事なく、一撃で消し去ってあげる」

 ユルシノタントウ?拳銃じゃないのか?
 しかも、あの化け物のうろたえ方、普通じゃない……

 間宮の持つ、青白く輝くそれの銃口が、化け物を正面から捉える。
 化け物は動けず、互いは対峙を崩さず、ただ流れない時の流れが、全てを静かに包む。


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