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例えばそれが、夢である必要
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例えばそれが、夢である必要-9

「大丈夫?」と、会って直ぐに彼女は言った。
「大丈夫ですよ」と僕は言った。
口をパサパサに渇き、声は少しかすれた気がした。それでも彼女は気にしない様子で続けた。
「大丈夫じゃ無い顔をしているじゃない。無理してるでしょ」
「していませんよ。少なくとも僕は」と、僕は言った。
「そう、なら良かった」
と、彼女は言って少しだけ笑った。笑った理由が、僕にはわからなかった。
彼女はなにかに気付いた様に、ポツポツと語り出した。
「そうね、今日はタケダ君の話をしましょう。出来るだけ賑やか話がいいわ。それも、とびっきり面白いやつ」
「そうですね」と、僕は言った。
「フフッ、タケダ君は素直ね。素直に世界と向き合っているし、高橋君とも向き合っている」
と、彼女は言った。眼が透き通っていたのが印象的であった。
「そんな事ないですよ」
「それは素敵な事よ」とも、彼女は言った。
素敵な声であった。

何故か僕は、昨日吐いた事を考えて、高橋の事を考えた。そして夢に現れたスイレンの花を思い出し、高橋が絵を描いてくれと言った理由について考えた。結局、全てに答えがでなくて考えるのを止め、僕は彼女に言った。
「僕は―高橋の友達でした。それも唯一で、一番の」
僕は、人生で一番ゆっくりと言葉を選び、人生で一番ゆっくりと話した。
「高橋には僕がいなくてはダメだった。どうじに、僕は高橋がいなくてはならなかった。周りはそれを知っていたし、僕達もそれを当然知っていました。僕の言いたい事、わかりますか?」
「わかるわ」と彼女は言った。
「でも、それでも、僕には高橋がわからないんです。 高橋は死にました。死んだです。僕には高橋が、高橋には僕が必要だと知っていて死んだんです」
「少なくとも、貴方のせいではないわ」と、彼女は言った。
「そうですね。そのつもりです。 ただ、やはり高橋には僕が必要だったんです。けど僕は高橋の心には貴女がいると思った」
事実―高橋が彼女を見る眼は特別であった。
「それが、高橋を焦らせた。高橋は僕の事を考え、クラスメートの事を考え、貴女の事を考え、そしてまた、僕の事を考えた。だから高橋はあんな事を言ったんだ」
「そうね」と彼女は言った。
無機質な声であったが、それも素敵であった。
「僕らに貴女の事なんかわからないって、高橋は言ったんです。僕はその台詞を聞いて、深く考えました。生まれて一番深く、悩みました」
青山 京子は笑わなかった。変わりに少し、涙を流した。
「そして貴女と話をしました。高橋の話を」
「そうね」と、彼女はまた言った。
「高橋はやはり、完璧な人間でした。今ならわかります、高橋は完璧すぎたんです。完璧すぎて、ゆえに不完全であったんです。それは高橋も、気づいていました」

高橋は言った。
飯おごるからって。
確かに言った。

「だから結局、僕は高橋にしてやれる事はありません。貴女と話す事ぐらいしかね。 ただそれも、やはり気休め程度でしかないんですよ」
「それも、タケダ君のせいではないわ」と、彼女は言った。
「どうですかね」と、僕は答えた。



「だって僕は、貴女の事が好きなんですから」


◆ ◆ ◆




それだけ言うと、僕は大いに逃げた。
何にって、全てに。


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