恋に恋するお年頃!?A-2
―数日前―
「漢字検定はまだいいけど、英語検定なんて受ける気しないよ。数学検定とかあればいいのに……。」
進学に向けてという意味もあり、検定は極力受けるように。というのが、恵の高校の方針だった。
漢検・英検は受験者も多いため、希望者は学校で受けることができる。
漢字はともかく、英語が苦手な恵にとってはありがた迷惑な話だった。
得意・不得意は別として、周りが受けてると、自分も受けなきゃいけないんじゃないかという気になってくる。
得意な数学の検定があれば……と、恵は常々思っていたのだった。
「あるよ?数学検定。」
「本当に!?」
思わぬ佐藤の返事に、恵は大声をあげる。
「あぁ、本当に受ける気があるなら、調べてくるけど…。」
「……勉強も見てくれる?」
押し付けがましくならないよう、恐る恐る尋ねる。
「そりゃ、ちゃんとやるのであれば、最後まで面倒は見ますよ?」
恵にとっては、この上ない絶好のいい話。
検定も取得できて、佐藤と過ごす時間が長くなるんだとしたら、断る理由を探す方が難しい。
「やる!私、数学検定受けるっ!」
恵の返事を聞くと、佐藤は早速パソコンを操作し
「お前のレベルだったら、3級くらいがいいんじゃないか?勉強頑張るなら、準2級も目指せると思うけど。……確か、問題集が家にあったから、今度持ってきてやるよ。」
……で、今恵の前にあるのが、その問題集。
以前、佐藤が使ったものらしく、所々に書き込みがある。
それがまた嬉しいと思う恵だった。
3級は、中学3年生レベル。
準2級は、高校1年生レベル。
佐藤が持ってきていたのは、3級・準2級の問題集。
恵は迷わず、準2級の問題集を手に取った。
レベルは高くなるけど、教えてもらうことを考えたら、少しでも難しい方が、一緒にいられる時間が長くなると考えてのことだ。
「とりあえず、問題解いてみ?わかんないとこあったら、聞けばいいから。あっ、でも期末テスト終わってからな。検定よりも、定期テストの方が大切なんだから。」
佐藤の言葉に、恵は素直に頷く。
「じゃあ、これ借りていってもいい?」
問題集を軽く掲げて、持ち帰りの許可を得る。
「いいよ。使わないから、お前にやるよ。」
想像以上の言葉に、恵の顔がほころぶ。
「本当に!?じゃあ、頑張って勉強しなきゃ!」
嬉しさを隠そうとしない恵の態度に、佐藤の表情も優しくなるのだった。
「メ〜グ。何かいいことあった?顔緩みっぱなしだよ(笑)」
雅美に声をかけられ、恵は反射的に両手で頬を押さえる。
「あ〜っ!やっぱり、何かあったでしょ!?正直に言いなさいっ!」
美智子と雅美に挟まれ、逃げ道を失った恵は、昨日の放課後のことを話し始めた。
「何それ!?良かったじゃんっ!!」
自分のことのように喜んでくれる2人。
佐藤のことを、嫌っていた2人だったが、恵の気持ちを知ると訳もなくけなすこともなくなった。
そんな2人の気持ちを感じ、恵も嬉しくなるのだった。
期末テストも終わり、後は夏休みを待つばかり。