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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第4章-1

最近、不思議な夢を見る。誰かが私に語りかけてくる…でも姿は見えない。

けれど、その声は不思議と懐かしくて…私は聞いてみる。

「あなた、だれ?」

すると決まって、その子は言うのだ。

―――わたしはね

************


そいつは人間から生まれた。

そいつの名は憎悪、そいつの名は慢心、傲慢、欲望、怨恨、嫉妬…人間たちの歴史の中で積み重なった、負の感情が、塊に固まって一つの意思を持ったもの。
この国の興りに、神が清浄と不浄をわけたときのように。

同じものを長く使い続けたり、動物があまりに長生きすると、まれにそれが特殊な命を持ってしまうことがある。
妖怪としての命を。
こうして生まれた妖怪は主に変化(へんげ)と呼ばれる。

そいつは、そうやって生まれたのだ。人間の負の感情が、あまりに慣れ親しまれた、近代の世で。


そいつは、空気の澱みのように、世界を漂っている。

最初に意思を持った澱みが、他の澱みを統率し、あるときは本能の赴くまま、あるときは確かな意志と理性を持って、殺戮を重ねた。

人間が尊ぶものを。

命、自然、信仰…彼らにとってはなんだってよかった。

手始めに、と目をつけたのが、誰にも省みられないくせに、まだ神様面をしてこの世にとどまっている狗族や、土地神、そして、妖怪の類だった。目障りだ。

狗族や、土地神のような存在は、澱みの対極にあるものだった。つまり、空気中の「澱み」や「滓(おり)」が変化となったのが自分たちなら、狗族どもは「上澄み」の変化なのだ。自然を尊ぶ心や、畏怖、尊敬。人間が上を仰いで得ようとする感情の具現化したものが彼ら「神」だ。

澱みの首領は思った。

目障りだ。

だが、ここ数百年で地に落ちたも同然の、奴らへの人間の信仰心。空気を汚すガス、はびこる犯罪、隣人との不和、疑惑の念、謂れの無い中傷、非難、憎しみ、欲望の渦…


…最高だ。


われらは勝利を手にしつつある。


なのに、小賢しい犬どもは、この期に及んで人間と手を組んでわれらの手に噛み付こうとしている。

ならば、狗の首領とやらに思い知らせてやらねばならない。


徹底的に。


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