飃の啼く…第4章-14
「今回、カジマヤは飃に助けを求めに本州まで飛んでくれたんですよ。」
まわりで踊っているシーサーたち。サンシンの音と歌声が、ウミカジの沈黙を埋める。
「…あいつの話した姉と言うのは、私の妻だったんです。私はいつだってあいつを子ども扱いしていたが、いつの間にか、男になっていたようだ。」
「…本当に勇気がある子です。」
若き戦士は、ふっと笑って、城の階段で眠ってしまった弟のところへ向かった。
カジマヤが目を覚まして、私のところへやってくると、耳元で内緒話を打ち明けてくれた。
私は、彼と一緒に笑った。
楽しかった旅行はあっという間に終わり、戦いの後の1泊は、友達であつまって、ウノをしたり、トランプで遊んだりした。お土産も大量に買い込み、後は帰るだけとなったが…
「先生、実は私、行きの飛行機で、飛行機恐怖症になってしまったみたいなんです。保護者には言ってあるので、船で帰っていいですよね?」
フェリーの甲板で、遠ざかる琉球の陸地を見つめながら、このあいだ飃が、海で歌った歌を口ずさんだ。
「敵はだませても、歌のほうは、名人級とは行かないな。」
横に居た飃が意地悪そうに言った。
「そんなこと言ってるとぉ、しなすよ(「ぶっ飛ばすよ」)!」
「…カジマヤのやつに教わったな?」
「そゆこと。」
そして、私たちは、九重や、北斗が、どんな風にして自分とつながっているのかについて話した。私は九重について。飃は北斗のことを。夢に出てきた不思議な声、そして、彼らが名前を教えてくれたこと…
夏の終わりの青い空に、私たちの声が吸い込まれていく。今頃は、あの村に、女たちが戻ってきているのだろうか。