飃の啼く…第4章-13
「北斗!!!」
現れたまばゆい光が、ナメクジの触手を跳ね返した。
飃の盾がバリアのようなものを作って、私たちを包んでいる。
やつは、おぞましい叫び声を上げ続けながら、それこそ水分を失ったナメクジのように小さくしおれて、一瞬のうちに灰燼に帰した。
どす黒いカスが、風に乗って消え…。
「あ…や、やったぁ…」
その光景に目を見張っていたシーサーたちが、わあっと歓声を上げて一気に私に駆け寄ってきた。私は、彼らと一緒になって、笑いながら、喜びに浸っていた。遠くから、飃がシーサーたちを掻き分けながら歩いてくる。
「あっ、飃ぃ!やった…っ痛ぅ…」
飃の拳骨が、頭を直撃した。
「この馬鹿!心配させて、おまけに敵にあんな姿を曝して、挙句の果てに誘惑するだと!?」
飃のすそを、カジマヤが心配そうにつかんでいる。
「し…仕方ないじゃない、他にどうやってあいつの弱点を…」
「お前というやつは!」そこで彼は腕を組んで私を見下ろした。
「己はとんでもない女を嫁にもらったもんだ!」
最後の言葉をいい終わるときには、飃は完全に笑顔になっていた。次の瞬間、私は飃の腕の中に居た。すると、今までの緊張が一気に解けて…
。
「ふ…ふぇえ…飃ぃ、怖かったよぉ…」
声を上げて泣いてしまった
「まったく、お前を守るのも一苦労だよ、奥さん。」そう言って、いつまでも頭を撫でてくれていた。
数人の怪我人、死者は無し…上出来だ。
その日の夜は、活気を取り戻したシーサーの村で、夕飯をご馳走になった。主賓、というのが照れくさかったけど。
食事を終えると、戦いのときに話して居た、あの背の高いシーサーが話しかけてきた。
「さくら殿、今回のことは、まことにお礼の言いようもなく…」
「ゃ、止めてくださいよぉ…」
「カジマヤから話は聞きました。あいつは私の弟なんです。私は兄で、ウミカジと申します。」
「カジマヤの、お兄さん・・・」
そういえば、似ている…。