仮面カタルシス-4
最初の部屋に戻ると、カウンターからさきほどの男が現れた。
「いかがなさいました?」「ダンスの申し出を断った………いけない事だったの?」
私の声はかすれていたかもしれない。
男の声は逆に楽しそうだ。「いいえ、そのような事はありません。ただ、珍しいだけでしょう。」
頭には疑問、わからない事だらけ。
「ここは何なの?」
「仮面舞踏会ですよ」
「違う!そうゆう事じゃない。何の、何のため?」
「仮面をお返し願えますか?」
私は一瞬、仮面とり外すのをためらったが、すぐに外し男に渡した。
男は静かに言った。
「ここは、足りないモノを満たす場所。あなたは気づきましたか?自分の欠けている所」
欠けている…トコロ?
「ここでは仮面は隠すためにつけるのではありません。補う、という言葉が適切です。」
意味がわからない。
「仮面にも表情があったでしょう?それがその人の足りない所です」
じゃあ、あなたの何の感情も無いその仮面は何?
そこで、目の前が真っ暗になった。
−ジリリリリリッ
あれ?目覚ましの音?
朝?
ゆっくりと体を起こす。
家の自分のベット。
夢だったのかな……?
現実が夢のような気もする。
私が私じゃなくなりそう、恐い
すぐに支度をすませ、家を飛び出し、学校へ向かった。
曇り空が私を不安にさせる。
誰か会いたい。
その一心で学校に走った。
学校に着く。
こんな早い時間だし、誰もいない。当たり前だ。
何やってんだろ、私。
息をととのえながら、自分の教室へ行く。
薄暗い教室、天気のせいだ。
入ってすぐ電気をつける。
−ッえ!?
そこには黒いスーツの男が静かに立っていた。
顔には何の表情もない仮面
ゆっくり右手を自分の顔にのばし、仮面を外す
「…と…遠野君?」
男は答えない。
「な、なーんだ。私が一番乗りだと思ったんだけどなー。てか、どうしたの?その格好、まさかホストだったとか?」
男は言った。
「そろそろ仮面をお外しになってはどうでしょう?」
彼の顔は仮面のように動かない。
私は今どんな顔をしているだろう。
彼は手を差し出して言う。「私と踊っていただけませんか?」
遠野深哉は笑った。
そして神島優も笑う。
私は彼の手をとった。
END