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仮面カタルシス
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仮面カタルシス-2

−ドクン
 
心に違和感が走る。
何も言いかえせなかった。 
「俺、もう行くわ、じゃあな。」
なにもなかったように、遠野深哉 は行ってしまった。
 
 
−カサッ
きつく握られていた左手に、いつのまにかチケットのような物があった。
『MASQUERADE』
と書かれている。
その下に場所と時間。
時間は11時30分、場所は…行ったことはないけど、知ってる、そこまで遠くはない。
 
遠野深哉が、知らない内に持たせたのだろうか、
それとも私は本当に記憶障害でもあるわだろうか。

どちらにせよ、こんな怪しい物、捨てないと。
もう一度見る。気にならないと言えば嘘になる。
裏面を見た。

その時、私を目眩と吐き気が襲った。
そこには『神島優様へ』と、私の名前が手書きで書かれていた。
やっぱり、遠野深哉が?
強い嫌悪感。
なぜか、どうしても行きたいという間違いが一緒に生まれた。
 
 
 
11時20分
気付けばその場所へと自転車を走らせていた。

もうすぐ
もうすぐ、着く。
 
 
−ここだ。
映画館?場所は合っている。入り口から光が見える、誘われるように扉の中へと進んだ。
 
 
「いらっしゃいませ」
真っ黒なスーツに身を包んだ、男の人が深々とお辞儀をしている。
なにより目を引くのは、男の顔にあるもの。
仮面。
それだけじゃない、壁を飾るように綺麗に等間隔で並べられている、たくさんの顔−
 
−仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面、仮面だ
 
「ここは……」
何?
「どうぞ、こちらを」
そう言って、男は少し腰を折り、私に片手を伸ばした。
えんじ色の布で装飾された、高価そうな台座。
その上にあるもの、もちろん。
仮面
笑ってる。作られた優しい顔。
嫌、恐い。


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