刃に心
《第24話・忍者探偵忍足疾風の事件簿〜お調子者を殺したのは誰か?
次々と明らかになる友の暗い心。
まさか犯人はこの中にいるのか?
果たして疾風は友を疑えるのか?
『湯煙温泉彼方殺人、
尚、今回のタイトルは本編と一切関係ありません事件』》-9
「疾風くんは…」
「疾風さんは?」
「疾風先輩は?」
「……………ヘタレ攻め♪」
おぉー!と二人から歓声が上がった。
「これは盲点でした…」
「攻めとか受けとかじゃなくて、もっと大きな視点で物事を見なければいけなかったんッスか…。
うぅ…自分はまだまだ未熟だったッス」
疾風は泣きたい気持ちで一杯になった。
その間に議題は『疾風は攻めか、受けか?』から『この中でカップリングするなら?』へと推移していった。
武慶は総受けだとか、ヒ&ユ×椎で下剋上だとか…
腐りかけのギリギリな話で3人は盛り上がる。
「疾風…」
泣きそうな顔で楓が疾風を見つめた。
「だ、ダメだからな!絶対にお、男同士など私が許さぬからな!」
「だから!俺はノーマルな人間です!」
◇◆◇◆◇◆◇
山はだんだんと深くなり、バスの走る道も断崖と絶壁に挟まれたものが多くなってきた。
「もうすぐ着くで」
───やっとか…。
疾風は内心で呟いた。
前方の席で盛り上がるBL談義と時々、近くで起こる小競り合いのせいで、疾風は少々疲れ気味だった。
だが、それらも鎮静化の兆しを見せている。
「このまま無事に着きますように…」
窓の外の緑を見ながら、ぽつりと願った。
しかし、その瞬間…
───ブロロロロロ!
けたたましい音と黒い排気ガスを吐いて、バスの横すれすれを真っ赤なスポーツカーが追い越していった。
「何なのだ今のは!危ないであろう!」
楓が隣で憤る。
「大丈夫ですよ。ナンバーは控えましたから」
「あー、ちょっと怖かったッス…」
仲間達は安堵の息を吐いた。
疾風も安心して座り直そうとして、はっとした。
「ほぅ…やるちゅうんかい…餓鬼が…度胸だけは認めたるわ…」
運転席で七之丞が低く笑い声を漏らしている。
「い、いかん!みんな!何かに掴まれ!
七兄も落ちつ「えー…毎度ご利用いただきましてありがとうございます…。
このバスは忍足家発…三途の川経由……黄泉行きやァアアア!」
七之丞がアクセルを踏み込んだ。
ぐわんッと重力が前方からのし掛かる。