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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第3章-7

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彼は美しかった。

古代ギリシャの神を模した彫刻のようだ。まっすぐに伸びる背筋には一部の無駄も、一瞬の隙もない。

戦いの喜びに胸躍らせるその姿は、まるで軍神といったところだ。



「さくら、難しいことは抜きにして、己はお前に死んで欲しくない。ここへ来る間、考えていたのはそれだけだ。」

飃の足が地面を蹴る。自分の倍は有ろうかという目玉を、軽く飛び越して反対側に着地する。目の前を飛び回るハエの如き飃の動きは、目玉を翻弄した。

「今はな、不思議なことに…」

飃は、化け物の身体にいくつもの傷をつけている。一方、飃は、石膏の像のように無傷だ。

「お前のために戦えるのが嬉しいのだ。」

触手の一本が、ガードをすり抜けて飃の頬をかする。彼は目を細め…

「…一人で戦っていたときより、気分がいい。」

そして、薙刀が、化け物の身体を突き抜けた。一陣の風のように。
化け物の瞳孔が、ショックによって激しく開いたり閉じたりしている。そしてゆっくりと、その目はなにも映さぬようになり…化け物は、最後まで口に薄ら笑いを浮かべたまま、塵になった。



私は、その様子を最初から最後まで座ったまま、情けなく眺めていた。

「…ごめんなさい。」

「謝るな。お前に謝られるほうが、傷より響く。」

私は顔を上げた。

「薙刀を使いたかったら、使っていいから…だから、また私と一緒に居てくれる?」

飃は、泣き顔と笑い顔を混ぜたような顔で言った。

「その台詞を言わねばならないのは己だ。」

そして、私の両頬を舐めた。

「泣くな、さくら。泣かないでくれ。」

そして、持っていた薙刀を見つめてから、柄のほうを私に向けて手渡した。

「これは、お前のもっているほうが良く似合うようだ…。」

その薙刀に触れたとき、奇妙な安堵感が広がった。欠けていた私の一部が、帰ってきたような。

そして、心の中で小さな声を聞いたのだ。

「あ・・・」

「どうした?」

「何か…聞こえた…」

困惑して飃を見る。

飃は考え込んだ。自分にも心当たりがあると言った感じだ。

「己も、ここへ来るまでの間、誰かにせかされていたような気がする。」

そして、二つの器物を見下ろして、言った。


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