昼下がりの図書室-4
「お願い、見ないでぇ……お願いぃ…お願いだからぁ…」
ほとんど声にならないような泣き声であやかは懇願する。
この年代で毛が生えているのは、珍しいことではない。
だが、毛の生えたての未成熟な性器というのは、どこか恥ずかしい物だ。
臨海学校、修学旅行……数々の激戦をくぐり抜けてきた俺にならば、その気持ちは痛いほどわかった。
そんな同性にだって見られるのを断固阻止したいほどの恥辱の塊を、こうして異性に晒しているのだ、さぞ恥ずかしいに違いない。
それこそ死にたいくらいに……
そんな気持ちに同情して、微かに、心の奥で罪悪感が湧き上がるのを感じた。
当たり前だが、彼女だって人間なのだ。
俺と似たような思考を持ち、俺と似たように他人に憧れ、俺と同じように他人を恨む。
そう、人間だ。
「なあ、たか……」
そこまで言って、俺は口ごもった。
よくよく考えれば、俺が一人言ったところで、何も変わらない。
いや、でも……
俺は俺の打算的な部分に打ち負けた。
「どうした?」
「早く、毛、触ってみてくれよ」
「まったくせっかちだな。言われなくてもするっての」
たかしはあやかの性器に手を伸ばした。
産毛の少し発達したような柔らかそうな陰毛が揺れた。
何とも言えない興奮が、俺の心で踊る。
さっきの俺はどこへやら。いつしか、俺はたかしの動きに期待を膨らませていた。
たかしの指は、しばらく陰毛を弄くると、その指を割れ目に沿って下へ下へと下ろしていった。
「んっ…ああっ……!」
僅かにあやかの腰が浮く。
高感度ラジオもビックリの高感度だ。
「いやよ、いやよも好きのうちってか」
上機嫌にたかしは、上下運動を繰り返す。
それに合わせて『クチュクチュ』といやらしい音が辺りに響き渡る。
「これがいわゆる『濡れる』ってやつか」
けんじが感心したように一人頷いた。
「うーん、これじゃあ見えないよなぁ」
たかしがしばらく楽しんだ後、一度手を離し、不満足そうにあやかを睨んだ。
正直、あやかを睨んだところでどうにかなるわけでもないのだが。
「なあ、あやか」
こっちまで恐ろしくなるほど、不気味な笑みを浮かべながらたかしはあやかのへその辺りを撫で回した。
「あやかの全部、見たいなぁ、奥の奥まで、見たいなぁ」
「や……やぁや!それだけはやめてよぉ!」
あやかは、ようやく意味が理解できたのか、いままで以上に泣き叫んだ。
それを確認して、たかしは満足そうに頷くと、俺達に指示をだした。
「前進〜〜!」
指示に従って俺らは、あやかの膝をあやかの腹につくくらいまで押し当てる。
M字開脚。だが、それはさっきと違いパンツのような遮る物の何もない、生の物だった。
「綺麗なピンク色だねぇ」
否が応にも、性器はパックリと割れている。
目に飛び込むサーモンピンクは、俺の頭を混乱させるほどに綺麗だ。
「ここ雑誌でもモザイク掛かってる部分だぜ」
俺の隣の人間が、興奮に興奮を重ねた様子で言う。
そう、そこはもう俺らにとって本当に未知の世界だった。
どれがクリトリスで、どれが尿道で、どれが膣か、まったく検討もつかない。
ただ、アメリカに初めて降り立ったコロンブスのように、見るものすべてを吸収するだけだった。