僕らの日々は。 〜一か八か。〜-3
「春風ー―!電話ー―!」
下で母親が呼んでいる。
…電話?一体誰から?
「もしもし」
『あ、春風?』
「一葉か。どうしたの?」
『今ヒマ?』
「え?…あぁ、ヒマだけど」
そういえば木曜にもそんなこと聞かれたっけ。…悲しいかな、予定は何もない。
『よし、今からウチに来なさい』
「今から?」
『そうよ。早くね』
「あぁ、いいけど…。どうしたの?」
『来れば分かるわ』
それだけ言って電話は切れた。
電話で呼び出されるのもそんなに珍しい事じゃない。家に呼ばれるのは珍しいが。
しかし、用件も言わずに呼び出されるというのは、いささか不気味だ。
「一体何考えてるんだ…?」
まぁ、さすがに命を取られるような事は無いと思うが…。やはり不気味なものは不気味だ。
「しょうがない。行くか……」
つぶやいて、僕は支度を始めた。
―――十分後。
ピンポーン♪
一葉の家に着いた。とりあえず呼び鈴を鳴らしてみる。
ガチャリとドアが開き、見知った顔が出てきた。
「あ、春兄ぃ。久しぶり」
「ども。陸斗君、一葉いる?」
「奥にいるよ。さ、どーぞ」
「おじゃまします。…あれ、おじさんとおばさんは?」
「今日は出かけてるよ」
陸斗(りくと)君は一葉の弟だ。現在中学二年生。
二つ下だが、かなりしっかりしたコである。
ちなみに、僕は『春兄ぃ』と呼ばれていたりする。
…それにしても、肝心の一葉の姿が見えないのは何故だろう。最近様子がおかしかったが、一体何を企んでいるんだ……?
「姉ちゃんは台所だよ」
「了解」
昔から幾度と無く訪れている為、家の間取りは把握している。
台所に近付くにつれ、いい匂いがしてきた。
何だろうと思って中に入ろうと……
パー―――――ンッ!!
……して、突然聞こえた破裂音と紙吹雪に目をパチクリさせた。
ようやく、さっきの音が一葉の鳴らしたクラッカーの音だったことに気付く。