No32 ペットボトル1-6
「それじゃあ、ちょっと休憩。ぼくも少し喋り疲れたところだった」
「それよりまた説明してくれた方が早いんだが…」
「言ったろ?喋り疲れたんだ、自分で思い出してよ」
オレの方を見ずに、ダルそうに答えた。
コノヤロウ…
「いや…それ以前にそんなに聞かないといけない話なのか?」
そうだ、よく考えればまずそこだ。
ただの戯言じゃないか、真面目に話の続きを聞かずとも何も支障は無いはずだ。
それを聞いたそいつは顔だけでオレを向いた。
「暑さ、紛らわせたいんでしょ?」
「…もう暑くない」
「汗が垂れてるよ」
「…」
…理屈ではこいつに敵わない、仕方なくオレは頭を回転させて、今までの会話を思い出した。
まぁ、暑さを紛らわせたいのは本当なのだ、…えぇと、真ん中が普通で…キャップが…
「…聞いた方がいいのさ、君はね…」
小さく呟いたそいつの言葉は、思い出す事に集中していたオレの耳には届かなかった。
そいつは聞こえていたかいないかなどどうでもよさそうに野球少年を眺めていた。
この五分後、オレは再びそいつの講義もどきを受けるのだった。
だが、それは次回の話。