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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第23話・勝利を手にした敗北者》-9

───ドクンッ!

疾風がその意味を問い質そうとした時、不意に背後から殺気を感じた。
反射的にその場から飛び退いた。

───ガガガガガガッ!

放射線状に弾丸が散らばった。
引き金を引いたのは彼方だった。
思わず振り向いた視界の隅で楓が倒れている。

「楓っ!」
「余所見しないでくれる?」

カキィン。
振り下ろされた軍刀を疾風は寸でのところで短刀で防いだ。
そして、素早く斬り返す。
霞はそれを一笑して回避した。

「楓っ!」
「大丈夫だ」

二度目の呼び掛けに、楓が刀の鯉口を斬りながら立ち上がる。
疾風は内心、ホッと息を吐いた。
二人は距離を詰め、背中合わせになった。楓が彼方と、疾風が霞と相対する。

「…どういうことだ、これは?」

背中越しに楓が問い掛けた。
すると、霞はニヤリと笑っていった。

「彼方上等兵、教えてあげなさい。誰が貴方の真の主かを」
「はッ!了解であります!
よく聞け!我が忠誠を捧げるのに相応しいのはお前ではない!そこにおられる霞総統だ!」
「良くできました」

霞が笑みを見せる。彼方はそれに恭しく敬礼した。
それで全てを理解した。

自分に大会のチラシが来なかった理由も、
何故、彼方にそれが届いていたのかも、
あの放送は自分ではなく、彼方を呼び寄せる為のものだったということも、

───そして、認めたくはないが、全てが霞の掌の上で転がされていたということも。

「気付くの遅すぎよ。仕事じゃないから甘くみてたんでしょ」

軍刀を横に払う。
疾風は短刀の鎬の部分でそれを躱した。

「やりにくそうね。得物がいつものと違うからかしら?
それとも…後ろのねえさんがそんなに気になる?」

霞が軍刀を構えたまま、視線を疾風の数メートル後ろに向けた。
彼方の放つ何発もの弾丸を紙一重で楓が躱している。

「うるさい…」

疾風は右手に短刀を握ったまま、腰のホルダーからデザートイーグルを引き抜いた。
瞬時に三発。
霞は不敵に笑って、それを軍刀で弾いた。

「…次はどうするの?」

銀色の刃に月明かりが反射し、霞の笑い顔を鮮やかに映し出した。


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