刃に心《第23話・勝利を手にした敗北者》-3
「謝って済む事ではないッ!」
「楓ッ!」
疾風がやや強い語調で言った。楓はビクッと身体を震わす。
「…刃梛枷のせいじゃない」
今度は静かに言った。
「…俺のせいだ……俺のせいで月路先輩もチョコ先輩も…」
唇を噛み締める。
後悔と自責。
その2つが疾風の心にのし掛かる。
「…いや、疾風のせいではない…それならば、私のせいだ…
私はあの場に居ながら、何もできなんだ…
それなのに、刃梛枷を責めて……すまぬ…」
楓は刃梛枷に向かって頭を下げた。
刃梛枷は黙って首を横に振った。
「…誰のせいでもないッスよ…」
呟くように眞燈瑠が言う。
「…今はそんなこと言ってる場合じゃないッス。態勢を立て直さないと…」
眞燈瑠の言うことは理解できる。
しかし、無理やり任命されたものではあったが、リーダーである自分が何もできなかった。
千夜子の時で言えば、リーダーの方が助けられるという体たらくである。
それを思うと自分を責めずにはいられなかった。
「…」
だが、いつまでもこうしていられない。
すぐに追っ手が来るだろう。
「みんな…」
疾風は顔を上げた。
瞳には強い決意の炎が揺らめく。
「なにがなんでも生き残るぞ」
コクリと頷く三人。
「これからの作戦だけど…火力も戦力も負けてる、今の状況でこっちがとれる作戦は一つだけだと思う」
「ゲリラ戦ッスか…」
疾風は無言で頷く。
「特に火力の面じゃ、まともにぶつかったら勝ち目なんてない」
「そうッスね…グロスフスに敵う装備は今の自分達にはないッスよ」
「何なのだ?その…ぐ…ぐす…」
「グロスフスッス。多分あれはグロスフスMG−42だと思うッス」
「そんなにヤバいのか?」
「そうッスね…あれは元々ライフル弾を機関銃で使えるようにと第二次大戦中にドイツで開発されたものッスから破壊力抜群ッス。
あの凄まじい射撃音から『ヒトラーの電動ノコギリ』なんて異名も付いてるぐらいッスから、真っ向からいったら即座に蜂の巣ッスよ」
「如何にも霞が好きそうな玩具だな…」
「……具体的にはどうするの…?」
「多分、あのKKとかいう奴等は霞の側にいるだろうから、まずは他の4人を何処かに誘い込んで仕留めていこうと思う。どうかな?」
「……異論は無い…」
「てか、その作戦しか無いッスよ」
「私も同感だ」
「じゃあ、まずは───」