刃に心《第23話・勝利を手にした敗北者》-15
「…何だよ」
「疾風が疲れているのが、見て判らぬのですか?」
バチッ、と火花が炸裂する。
「今日ぐらいとは言ったけど、別に今日絶対に来てくれってことじゃねぇんだけど」
「それにしても迷惑です」
バチバチッ!
火花が段々激しさを増していく。
疾風はどうしたら良いものか、と働かない頭で考えていると、不意に背後に気配を感じた。
「……おはよう…」
くるりと振り向いた先には刃梛枷。
「…おはよ」
「……眠そう………大丈夫…?」
「……ちょっとね」
「……なら………こんなところにいないで教室で仮眠を取るべきだと思う…」
「…俺もそうしたいんだけどさ…」
あの二人が…、と疾風は火花を散らし合う楓と千夜子に目を遣った。
すると、刃梛枷は疾風の手を握り、そっと引いた。
「…刃梛枷?」
「……放っておけばいい………その内、収まる…」
そのまま疾風を連れていこうと刃梛枷は尚も引く。
「「ん?」」
何かを感じたのか、二人は同時に睨み合いを止めて、疾風の方を向いた。
そこには丁度手を握り合う疾風と刃梛枷がいた。
「刃梛枷ー!!!」
「何、やってんだテメェ!!」
刃梛枷も二人の方に向き合う。
「……静かにするべき………この人は寝てない………それなのに貴女達が騒いでいると………はっきり言って迷惑…」
冷たい視線で二人を見据えた。
先程よりも大きな火花が散った。
「…お願いだから休まして…」
疾風はぽつりと溢した。
しかし、火花はやがて大きな火柱へと変わっていくのだった。
結局、疾風が休めたのは家に帰ってからだった。
続く…