ツバメG-2
『あれ?関西弁の人は?』
椿芽は空席があることに気付き、隣の女に尋ねた。
「あの人なら、彼女がここを突き止めたみたいで引っ張られていったわよ」
『…へえ』
「すごい綺麗な人だったわ」
あの人の彼女見てみたかったなぁ、なんて考えていると、鋭い視線を感じた。
『……』
それは、向かい側の一番遠くに座っている男からのものだった。
じっとあたしを見つめている。
『あ、れ?』
不思議なことに気付いた。
あたし、彼に会ったことがあるような気がする。
思い出せないけど、きっと…
名前はなんて言ってたっけ。
先ほどの自己紹介を振り返る。
思い出せた。
名前は……
その瞬間、あたしの携帯がけたたましく鳴り響いた。
『ごめんなさい!』
慌てて携帯をマナーモードに設定する。
『……誰だろ』
メールを開くと、思いがけない人物からだった。
一緒に抜けだそう。
桜実
すごく驚いた。
でも、合コンは楽しくないし、桜実くんと昔話がしたくなった。
うん、出口で。
椿芽
『ごめん、ちょっと急用で行かなくちゃいけなくて……』
「そっか、まあ無理に頼んだのはあたしだし。気をつけてね」
『ありがと』
メールを返すと、すぐに隣の子に小声で言った。
そしてメンバー全員に会釈して、その場を飛び出した。
『ごめん、待った?』
「いや、全然」
桜実は壁にもたれて、タバコを吸いながらニッと笑った。
『あれー?タバコやめたんじゃなかったのー?』
「最近になって復活」
『あはは、なにその心境の変化』
「……まあ、気にすんな」
『うん、じゃあ気にしない』
あたしは久し振りのこの感じに懐かしさを覚え、笑う。
「じゃあ飲むか」
『うん!』
二人は揃って歩きだした。