reality ability‐第3話‐東の森、holy forest‐-5
‐一方、“聖なる森”‐
織音は中心部にある“神木”と呼ばれている場所にいた。辺りを見ている。四天王を探しているだろう。すると、目を閉じオーラなのか単なる蜃気楼なのか解らないが織音の周りが歪み始めた。
「微妙に感じるだけど、はっきりしないわね。」
どうやら、オーラだったらしい。目を開けて、幻想具現化を出す。そして、身構えた。
だが、敵が一向に現れる気配はなかった。
「何処にいるの?出てきなさい?‥‥“記憶の欠片”を渡しなさい!」
織音の声が森全体に響き渡る。
しかし、依然として静かに時が過ぎた。
「‥‥‥」
織音は構えを解く事無く、辺りを再度見る。すると、
「ふっ、そろそろ攻撃してやるよ!」
織音の正面から、素早い動きで仕掛けてきた。
〈ギィン!〉
「ちっ、‥受け止めたか。」
その正体は皇希だった!!何故、彼が攻撃したのだろうか?
「その姿は止めなさい?跡形も無く殺すわよ?‥‥」
織音は泣く子も黙りそうな声で言った。
「何を言っている、織音?俺が解らないのか?」
〈ヒュン!〉
皇希?の頬に織音の片方の剣がかすめた。もう一方は心臓の前で寸止めされていた。
「織音と呼んでいいのは、皇だけよ?」
皇希?は頬に片手を当てて、微かに流れる血を止めた。
「痛いなぁ。さっきから、何をするんだ?」
皇希?は織音の言葉に聞く耳持たずのようだ。織音は無言で睨み付けながら、剣を更に強く握り締めているが、何もしない。
互いに動かず、時が経つだけだった。すると、
「‥‥‥。幽魔 那奈夜だっけ?貴女は“彼”に似ても似つかないわよ。どんな事をやってもね。」
織音と静かに言う。そして、この偽皇希は那奈夜だと言った。
「くっくっくっ、俺が那奈夜だと?何を言っているんだ?」
どうやら、とことん知らんぷりをするらしい。
「そう‥‥。なら、解かせてもらうわ。“解封”。」
すると、偽皇希の姿が徐々に那奈夜の姿に成り始めた。
「っ!?‥‥“禁断詠唱”!?」
那奈夜は驚き、思わず後退りをした。
「悪いけど、私はお父様に少しばかし聞いているのよ。」
織音は司義莉からある程度の“禁断詠唱”を聞いていて、少しは詠唱も出来るらしい。肝心な事を知らないようであるが‥‥。