【思い出よりも…終編】-9
「だが、出て来たのは姉だけだった。おまけに妙に取り乱してね……私はイヤな予感がして貴方の部屋へ行った」
「そこに私が倒れていた…か…」
沢田はゆっくりと頷くと、
「姉を殺人犯にはしたくありませんから…」
「そうだ、慶子は?」
沢田の顔から柔和さが消えた。
「なあ、慶子は?君の姉さんはどうしてるんだ」
能面のような無表情で、沢田は答える。
「姉は…自首しました。今は拘置所…でしょう…」
「そんな……」
沢田は大きく頭を振りながら、
「いくら貴方が助かっても…実刑は免れないでしょう。殺人未遂ですから…」
「そんな……」
私は目頭が熱くなり涙が溢れた。
(全て私のせいのために彼女が処罰されるなんて…)
「だから言ったんだ。思い出にとどめておけば、お互い不幸にならなかった…」
私は沢田に訊いた。
「私は何をすれば良いんだ?教えてくれ」
彼は疲れた表情で、答えた。
「刑事裁判で姉を弁護して下さい。姉を早く出所させたければ…」