五月、雨、君と夜と-1
銀河の夜。
僕は両手を広げ空を扇ぐ。
夢を見てるみたいで清々しい、また切ない。 気のない光は少し暖かくて僕の中では虹が立つ。
日の光に追われて来た星達は仲良しこよし。
昨日と今日さえ肩を組む日の入り後。
何故かはわからないけど君の事を思い出したんだ。
『五月、雨、君と夜と。』
雨降りの日曜日だ。
朝、雨が窓を打つ音で目覚め、昨日はあんなにも良かった天気が今日は不機嫌なおもむき。 僕の心も沈む様で。 気持ちの良い朝を迎えられないフラストレーションは、しかしそんなに大きくはなかった。
日曜日はほとんど家にいるし、今日もそんなに予定はなかったから。 決まって昼まで寝ている僕にとっては、なるほど雨はシトシトと語りかけてる様だった。
気分は沈んではいる。が、とりあえずは悪い気はしなかった。
僕は居間に出て、コーヒーメーカーのスイッチを入れるため指を伸ばす、が、寸での所で思い直し止めた。
その手をそのままテレビに持ってく。昨日に冷蔵庫に入れておいた君に貰った缶コーヒーを飲もうと思い、冷蔵庫のドアに手を伸ばした。
が、それも止めた。
何故か今日はいつもの朝のニオイを感じるのが嫌だった。
いつもと違う、雨のニオイ。
今日の空はご機嫌ななめ。
君に、“ありがとう”がただ言いたい。
気分次第の僕は、急にそんな事を思いついた。
◆
12時を過ぎたばかりの時計の針はどこか寂しげに見えて、雨足は更に強くなっていく。
窓を打つパタパタと言う音は僕を更なる眠りへと誘っている様で少し快感を覚えた。
こんな事ならコーヒーを飲んで置けば良かった。
瞼が重くなる。
僕はベッドに横たわり、曖昧な世界に潜って行った。
覚えのない画像が脳裏に浮かんだのをリアルに感じた。
あぁ、これは夢だ。
なんとなく、唐突にそう思った。
夢の中なのに意識ははっきりしていて、それがなんか可笑しかった。
ボンヤリと映る見知らぬ風景。そこには何故か、日常と言う名前がふさわしいと思った。
冬の海を歩く少女とその父親。 その手はしっかりと繋がれていて、少女は父の顔を怪訝そうに眺めている。 父親はそんな事には気をかけないで、ずっと海の方を向いていた。 その先には白い女性がいて、その顔を見る前に僕のイメージは途切れてしまった。
真っ暗になる視界。
少女はなんとなく、君に似ていた。
だだなんとなくだけど、君に似ていた。
…理由なんてやはりないのだけれど。
夢の中でそんな事を考えていたんだ。