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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み 3 〜後輩〜-12

 龍之介は目を開けて、眼前に広がる可愛い顔をじっくりと眺めた。
 不意に、美弥がぱちんと目を開ける。
 ばっちり視線が合ってしまい、龍之介は特に後ろ暗い事もないのにあたふたしてしまった。
 美弥の瞳に、いたずらっぽい光が宿る。
「龍之介、何か隠してるのかな〜?」
 キスを中断し、美弥はずいっと顔を近付けた。
 龍之介には、付き合っていく上で隠したくなるような秘密などない事を、美弥は知っている。
 今は単に、からかっているだけだ。
「ある……って言ったらどうする?」
 それが分かっているから、龍之介はそう言える。
「ん〜……」
 美弥は龍之介の腕に軽く爪を立てる。
「刺ス。」
 あっさり爽やかに言われた分、物凄くコワい。
「み、美弥ぁ?」
 実際に龍之介は、かなり引いた。
「万が一、の話よ。龍之介はそういう事しない……っていうかできないの知ってるし、それより前に信じてるもの」
 美弥は日常生活で龍之介の挙動を眺める度、その事を知らされる。
 クラスメイトの女子と世間話するような事態になったりした時など、背中は壁に向けるか椅子に座るか、さもなければ男子の誰かと背を合わせるなどしてガードし、常に一定以上の距離を置いていた。
 お喋りは我慢の限度内だがボディタッチはどれほど軽くても駄目という、龍之介の体。
 心の傷が癒える日は、だいぶ遠そうである。


「伊藤先輩」
 図書室でテストの予習をしていた美弥は、その声に顔を上げた。
 色黒で愛想の良さそうな顔付きをした少年が、美弥を見下ろしている。
「え、と……」
 見覚えのない顔に、美弥は首をかしげる。
「あ、俺……赤荻真継(あかはぎ・まつぐ)って言います」
 少年は、見た目通りに愛想よく自己紹介してくれた。
 やはり初対面かと、美弥は納得する。
「いきなりで申し訳ないんですけど……お時間、割いていただけないでしょうか?」
 本当にいきなりな申し入れに、美弥は眉を寄せた。
「あ、俺は菜々の……谷町菜々子の、幼馴染みなんです」
 断りたそうな気配を感じ取ったのか、赤荻真継はそう言葉を付け足す。
「え……」
 意外な言葉に、美弥は驚いた。
「あいつ今、高崎先輩にアタックしてるじゃないですか。伊藤先輩がいるんだし手を出すなって、口酸っぱくしてるのに全然聞いてくれなくて……」
 さも困ったように、真継は眉を寄せる。
「ですから、こうして相談に来たんです。あいつが相手のいない人に目を向けられるように、協力体制が作れないかって」


「うおおおおっ!終わったあああああっ!」
 教室でバンザイしているのは、龍之介の友達だった。
「今日のはあくまでもテストの予想範囲だ。きちんと予習しとけよ」
 散らばったノートや教科書を片付けながら、龍之介は言う。
「はいはいわーってますって」
 投げやりな相槌を打たれた龍之介は、がっくり肩を落とした。
 こいつは絶対勉強しない。
「で……高崎」
「んぁ?」
「伊藤って、どうよ?」
 龍之介は、即座にすっとぼける。
「可愛いよ」
 言葉の裏に潜む意味を誤魔化しにかかると、友達は人差し指を左右に振った。
「ちっちっちっ……俺が聞いてるのは、伊藤の体の具合の事だ」
「健康そのもの。実に好ましい」
「SEXの具合を聞いてるんだが」
「言える訳ないだろうバカタレ」
 友達はわしっ!と龍之介を掴む。
「右手が恋人の俺としちゃあ、女のアソコっちゅーのがどれくらい気持ちいいのか、想像つかんのよ」
 龍之介はぎりっ!と握り返した。
「万が一そんなの話したら、おまいは美弥をおかずにするだろ?そんなの、ごめんだね」
「ケチくさいなぁ……」
「美弥を汚されてたまるかっ」
 などと言いあっていたその時、龍之介の携帯が着信音を鳴らす。
「あ、ちょっとごめん」
 言い合いを中断し、龍之介は電話に出た。
「美弥?」
『あ、龍之介?』
 電話の向こうからでも分かる柔らかい声に、龍之介はほわんとしてしまう。
「どした?」
 その問いに、美弥は歯切れ悪く答えた。
『あのね……今、あの子の幼馴染みっていう男の子と一緒にいるの』
「……!?」
 電話の向こうで、美弥の近くに男がいる。
 一瞬頭がカッとした。
『で、その子があの子の弱点を教えてくれるって言うのよ』
 その言葉で、嫉妬の炎はたちまち鎮火する。
 我ながら現金だとは思うが、美弥と付き合っているうちにそういう風になってしまったのだから、諦めるより他にない。
『だから今日は一緒に帰れないかなぁ……なんて』
 おずおずとした声に、龍之介はため息をついた。
「……頼むから、弱点をしっかり聞いてきてな」
『うん!』


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