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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第2章-2

「ほう、勉強熱心なのを褒めたほうがいいのか、うっかり屋なのを叱るのがいいのか……」

「青山先生!」

まっず―…

「教科書を貸してやるから、八条は生物室に来なさい。英澤、こいつを甘やかすなよ?」
「はぁい……」

茜はうっとりと先生を見つめて言った。私も、はたから見ればあんなふうなのかな……。

生物室に向かう間、私は先生を穴が開くほど見ていた。このまま先生が振り返ってくれれば、めがねの奥の切れ長の目に、すっと通った鼻筋、笑うと右端がくいっとあがる唇が……
「さあ、ついたぞ。八条、俺の顔に何かついてるならはっきりといいなさい。」
「え?あ、いや、何にもついてません!」

アホだ、私は。。。

生物室で教科書を借りて、茜に詳しく報告してやろうと思った瞬間、準備室の鏡に映った先生の影が、どこか……おかしいような…
気のせいだよね。

その日は、部活が無かったので、帰り道に茜と、青山先生話で盛り上がった。先生のここがいいとか、先生に告られたらどうするかとか。先生と、図書館司書のうわさについて。
「でもさ、あの司書、黒いスーツの下はなかなかにナイスボディーだと思うよ。」

「黒い髪も長くて奇麗だしね・・・」

ため息。

ここのところ、新しく来た司書のところで、長い間話し込んでいる先生の姿が度々目撃されているのだ。そりゃあ、お互い大人だし、そういうことが無いとはいえない……でも、心の中でこんな風に先生を見ていることが、飃に対する罪悪感をちょっとだけ芽生えさせた。

家に帰ると、飃の機嫌はことさら悪かった。帰ってくるなり

「さくら。よくないもののにおいがする。」

「―っ・・・!失礼ね!女性に向かって―それも自分の妻に―帰ってくるなりかける言葉が匂いのことなわけ!?」
青山先生は取っても紳士的でやさしいのに、この天狗風情は、私に向かって、臭いと言い放った!この戦いが終わり次第、とっとと離婚してやる・・・などと思いながら、その夜はひときわ念入りに身体を洗ったことは、飃には悟られたくなかった。

飃は終始むっつり黙り込んでいたし、時たま何かの匂いをかいではまた考え込んでいた。彼が手にしていたのは「遺伝学」の本だ。現在私が生物で習っている範囲でもある。子作りのことでも考えてるわけ?ふん!呆れた!


次の日、教科書を貸してもらったことに有頂天になっていた私は、宿題というものの存在をすっかり忘れていた。結局、居残り補習は実現したが、部活にも出れないし、たぶん帰りも遅くなる。私は生物が大の苦手なのだ。先生は、「遺伝」のプリントを私に手渡すと、どこかへ行ってしまった。その間私は、「遺伝」のプリントに向かって、ぶつぶつ罵詈雑言を浴びせかけていた。遺伝の規則性をあらわした表を埋めるという作業だったが、まったくわからない。しかもよく見ると、これは昨日飃が読んでいた本の中に載っていた表じゃない…?。
その時―――

!?

校舎の遠くで、叫び声が聞こえた。たぶん、女。方角からすると、図書室の方向だ。飃が司書に見つかったんだ。


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