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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-34

『フールの目を盗んでか?』
「ええ。」
『なら重役会が始まる前にしよう。建物の手前に庭があるんだが、その庭の隅に下り階段がある。その階段を降りると滅多に人のこない小さな庭があるんだ、そこで会おう。』
もし俺が本当に犯罪組織に身を置く人間だったとして、彼女が持ちかけた司法取引に応じたとする。だがその先に俺と彼女が共に過ごす未来はない。
俺は一体何を望んでいるのだろうか。
彼女を欺き、悩ませ、一体どんな選択をさせれば満足するのだろうか。
一瞬、俺の心の中の黒い部分が見えた気がする。その中には醜い独占欲と嫉妬が渦を巻いている。
「わかった。時間はどうする?」
『そうだな…、一時半頃になら行けそうだ。』
俺は強襲の最終確認の為にINCの駐在官事務所に寄る必要がある。横浜に着けるのはその辺りの時間になるだろう。
「じゃぁその時間に。」
『あぁ。』
そう言って俺は手にしていたグラスのバーボンを一気に飲み干した。
俺は何の為に彼女をこの捜査に引き込んだのだろうか。
真実を隠し、彼女を欺き、何を得ようとしているのだろうか。
だが彼女に出逢えた事を後悔はしない。彼女を欺いたからこそ、知ることが出来た事もあったのだから。
だから彼女にも、俺を欺いた事は後悔して欲しくない。自らを偽った罪を感じて欲しくはない。
君がいくら自分を偽ろうと、君の強かさ、聡明さ、そして心の美しさに嘘はなかったのだから。
『レイラ、こっちにこないか?』
彼女は無言のままベッドに座る俺の横に座った。直ぐ様俺は彼女の唇を引き寄せ口づけをする。
『レイラ、君は素晴らしい。君と出会えた事を俺は本当に感謝する。君の頭、君の体、全てが俺には愛おしいよ。』
彼女は俺の言葉に目をそらした。そのそらした瞳には嘘を悔いる陰りが見えた気がした。
俺は心の中で彼女に詫びた。
俺の歪んだ完璧主義は君を酷く傷付けたかも知れない。
明日になれば、君の罪の意識を払拭してやる事ができる。ただその時までは、最期の時までは、君のその強さを俺に感じさせてくれ。
『玲良。』
「えっ?」
彼女の耳には違和感が残ったのだろう。直ぐに彼女は俺に問掛ける。
『やはり変か?』
彼女は僅かな言葉のイントネーションにも敏感だ。
「もしかして“玲良”って日本の発音で呼んだの?」
俺は彼女の問いに頷く事で答えた。
『あぁ。玲良、重役会が済んだら旅行に行こう。言ったろう?小島のリゾート。今日、予約をしたんだ。』
ホテルの部屋で彼女を待つ間、俺はこの場所で交した約束を思い出していた。そしてすぐに携帯を取りだし、約束を果たす為の電話を入れた。
「行けたら、ね。」
『いけるさ、俺達は最高のチームだ。』
「………。」
彼女は沈黙を通した。そうだろう。彼女の中ではまだ、明日以降の俺達が共に歩む未来は無いのだから。
強襲で俺は命を落とすかも知れない。
政府権力によって捕えられ、償罪の為に今後一生を檻の中で過す事になるかも知れない。
彼女からの司法取引を受け入れたとしても、彼女と会う事は二度と叶わない。
つまり、どの未来が訪れたとしても、彼女と俺の道が重なる事はもうないのだ。
彼女はきっと互いの立場の違いに絶望しているだろう。
だがその絶望を乗り越えた時、俺は彼女の最高の笑顔を見れる気がしていた。


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