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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-33

『この何日間かで何か変わった事はなかったか?』
「そうね、やたら私になついてくれる2人がいるわ。」
おそらく、フールとアゲハの事だろう。
『まぁ、その辺は適当にあしらうのが得策だろう。』
フールから既に彼女に対して新たな組織への誘いがあったとしても、彼女はそれに揺らぐ事は無いだろう。彼女は麻取の人間であり、明日開かれる重役会で組織への強襲が行われる事を知っているのだから。
「あら?じゃぁあなたの事も一緒にあしらっちゃっていいのかしら?」
『構わないさ。だが、君は俺から離れる事は出来ない。』
俺は自信を持った口調で彼女に伝えた。
「随分根拠に乏しいお話ね。」
『根拠は俺と君の中にあるのさ。』
そう、根拠は俺達の中に…。
俺達が互いに本当の姿を隠して組織に入りこんだ、政府機関の人間であるということ以外にも、互いに通じあった心と感情が根拠になる。
真実を知ってなお、彼女の心が変わらなければ俺達が離れる理由はない。
全ては彼女の心次第。
ホテルを利用する以外の人間もわざわざ足和運ぶ、このレストランの料理はなかなかのものであった。
“最期の晩餐”なんて言葉を使う気はさらさらないが、美味い料理と一流の雰囲気、美しい彼女に彩られた時間は極上のものだった。

食事を済ませた俺達は部屋へと戻り、ルームサービスで各々に好きなアルコールを頼んだ。
『本題に入ろうか。』
俺はバーボンのグラスを手にベッドへと腰を下ろした。彼女は煙草をふかしながらソファに座っていた。すぐ前のテーブルにはカシスのカクテル。
『明日午後、重役会が開かれる事になった。』
「それは私も行けるの?」
『あぁ、君にはフールからのお呼びがかかってる。』
彼女が息を飲むのがわかった。
「あなたも呼ばれてるんでしょう?」
『あぁ、もちろんだ。だが、君と一緒に行く訳にはいかないだろう。』
俺は溜め息をついた。そして彼女が何故?と訊く前に言った。
『俺と君がデキてる事が、面白くない奴がいるのさ。』
「フール?」
俺は彼女の言葉に笑い、肯定するように頷いた。
事実、フールは俺と彼女が行動を共にする事を良しとはしないだろう。フールにとって俺は邪魔者でしかない。
強襲の直前にフールを刺激する事はしたくなかった。それは彼女を手に入れようとするフールに強引な手には出て欲しくなかったからだ。
『だがレイラ、気を付けろ。あいつはただ君に惚れてるって訳じゃないだろう。何か裏があると俺は思っている。』
「わかったわ。」
俺は彼女にフールの真の目的を告げる事はなかった。だが真剣な顔をして注意を促した俺に、彼女も真剣な返事を返した。
『重役会の場所はここに書いておいた。明日の二時までにはここに行ってくれ。』
俺が彼女に渡した物は、INCが強襲をかける為に用意した建物周辺の詳細な地図だった。大まかな地図の他にもう1枚、重役会の開かれる建物や庭、門や駐車場などの位置関係が細かに書かれた地図がある。
正体の露見を防ぐ為、日本麻取との連絡を極力避けている彼女の元には、強襲の詳細な作戦内容は届いていないだろう。彼女自身の身を守る為にも、事前にある程度の建物の構造や位置関係は把握しておいて欲しかった。
出来る限り、彼女には危険に身をさらして欲しくない。
「ねぇ、向こうに着いてからあなたと会う事は出来ない?」
地図から顔を上げた彼女が言った。
俺の正体を知らない彼女は、俺に司法取引を持ちかけるつもりなのだろうか。それは強襲以前に俺が司法取引に応じれば、強襲で危険に身をさらす事もなくなるという彼女の優しさなのか。


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