レン-10
「……蓮。」
『わかってる。』
彼女の願いはわかっていた。
俺は自身を彼女の果実の割れ目へと当てがう。
だがそれをそのまま彼女の中へと侵入させる事は無い。果実を逸れた俺自身は果実の上にある淫芯を擦った。
じらすように擦り、時にはその周りだけを刺激した。
俺はそんなに素直な男じゃ無い。
それに今だけは、素顔の彼女を感じたかった。芝居などする余裕の無い、ありのままの彼女を。
「あっ、やぁっ、んんっ!!」
望んでいた刺激とは違う刺激に彼女は戸惑いの表情を見せたが、すぐにその刺激を受け入れ快楽を貪り始める。
俺は果実から溢れる蜜を自身で掬い取り、淫芯に塗り付けては更なる快感を与える。
それを繰り返された事によって、果実はすぐに全体が蜜で濡れそぼった。
快感にあえぐ彼女はうっすらと目を開け、俺に願望を伝える。
「愛して…。」
『あぁ。』
「もっと愛して……。」
俺はそんな彼女の言葉に、思考が熱に侵されるのを感じた。思考は彼女だけを求めている。
俺は彼女の中に自身を進めた。果実の割れ目を押し広げ、最奥を目指して。
『ロシア人には俺みたいな東洋系じゃ物足りないかと思ったよ。』
俺自身が彼女の中を満たした時、俺は言った。
不規則な収縮を繰り返す彼女の果実は、俺を強かに締め付けている。
「そ…んな事、無いわ。それに…私、日本人よ。」
途切れ途切れにそう言った彼女の答えは、俺には思いもよらぬ言葉だった。
だがそんな言葉の意味を、問いただす余裕は無かった。
潤いきった彼女の果実は俺自身に快感を与えると共に、俺の欲望を確固たる物に変えていく。
完全に身を委ねた彼女をじらすように、俺は腰を上下させる。奥を擦るように動いたかと思うと腰を退き、入り口近くを持て遊ぶ。そして一気に貫き彼女の絶頂を探る。
限り無く絶頂に迫られた彼女は腰を浮かし、俺の体を引き寄せ、唇を求める。
俺は唇の求めには素直に応じた。
しかし絶頂を素直に与える事はなく、彼女が達しそうになる度に動きを緩めた。
不規則な快感に翻弄され、絶頂を迎えられないもどかしさが彼女の表情にはあったが、そこには嘘の無い彼女の姿があった。
「―――あなたが不良だったってことが充分わかったわ。」
昨夜とは全く違う方法で彼女の体に触れた俺に、彼女は言った。
そもそも昨夜の行為に、俺が快感を感じる必要は無かったのだから当然だ。
互いに限界を感じるまで高め合う、それが俺のやり方なのだ。
『これで貸しはなしだ。俺は俺のやり方で君を抱けた。』
「どちらも嫌いじゃないわ。」
彼女は俺に微笑んだ。
最後の瞬間、彼女は強く強く俺の体を抱きしめて達した。
互いの体に溜め込まれた快感のうねりが、一気に解放されるかの様な絶頂だった。
やっと許された絶頂に安堵の表情を見せる彼女を、俺も優しく抱き返した。
そして俺は気付いた。
彼女に対する、彼女だけに感じる特別な感情に。
『俺は……相手によるな。』
「なるほど、腐るほど女がいるわね。」
『少し素直になってきたな。』
「何が?」
『その言葉にはヤキモチが含まれている。』
「嫌な男!」
俺は彼女に微笑み返し、掌で彼女の手を包んだ。
『君がただのつっぱりじゃなくてほっとした。』
彼女は驚いた様に俺を見た。
「ただのつっぱりに見えた?」
『最初に会った時は。』
「つっぱりが好きなのかと思ったわ。」
『つっぱって、つっぱって、その内側がかいまみえる時が好きなんだ。どこまでいってもただの鉄の塊なら御免だ。どんな美女だとしても。』
「嫌味でも何でもなくて、私より綺麗な女はごまんと見てるでしょ?」
『綺麗で尚且つ、一緒に仕事をしたいと思った女はそうはいない。』
彼女はソファから起き上がった。だが俺はクローゼットへ向かおうとする彼女の腕を引き寄せ、再びベッドへと戻そうとする。