ツバメF-5
「綾瀬くん」
『はい』
「私と結婚してほしい」
『………は?』
またわけの分からないこと言い出したよ、この人。
「いいだろう?私には地位も金もルックスもある!」
『きゃ』
ガシッと肩を掴まれた。
「なあ!」
その瞬間、芝は椿芽をベンチに押し倒す。
『や、やめ…』
「たのむ!私には君しか!」
抱き締めてくる芝。
『こ…のっ!』
「うぐぉぁっ!」
あたしは芝の股間を思い切り蹴りあげたのだった。
燕にいつも食らわせていた一撃がこんなときに役に立つとは。
「すまなかった」
『……』
数分後、落ち着いた芝はさっきまで飛び跳ねていた姿とは打って変わり、冷静に頭を下げた。
「私は自分を見誤っていたようだ。もう君には近付かない」
『……』
芝はフッと微笑むと、振り返りあたしの元から去っていった。
……足を引きずりながら。