Out of reality the world-4
――男を見せろ僕!!
僕はそれを合図に持っていた果物らしきものを化け物に向かって投げつけた。
投げたものは綺麗に円状を描き、化け物の顔に吸い込まれていく。
そして、鈍い音と共に化け物は外見からそぐわない可愛い泣き声を上げてもがき始めた。投げたものは見事に化け物の顔面で割れ、なにやらネバネバとした液体をだしている。異臭もするのか、化け物は鼻を地面に擦りつけ喚いていた。
「……え?」
まさか当たってしまうとは思わなく、僕はこの光景にしばし唖然とする。だがハッとなり、今のうちにと彼女に逃げるように、合図と共に声を掛けた。
「今のうちに逃げて下さい!」
「っ!?」
そう叫ぶも彼女は今の状況に付いていけないようで、僕と今だもがいている化け物を交互に見ている。僕はそんな彼女の様子に痺れをきらして荒々しい声で叫んだ。
「早く逃げろってっ!!」
その声に少女はビクッと驚き、今自分がすべき事がわかったのか、僕に向かって一つ頷いて逃げようとする。だが、地面に付いた腰は思っているよりも反応しなく、何度立ち上がろうとしてもうまく立てずにいた。
「腰が抜けてる!?」
なんて予想外の事態であるのだろうか。まさか、腰が抜けているなんて。
今だに化け物と少女の距離は変わらなく、危険な位置に彼女はいる。
僕は「くそっ」と舌打ちし、化け物に注意をしながら少女の下へと駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
彼女のところへ駆け寄ると、なだめるように声を掛けた。
「こ、腰が、抜けちゃった……みたいなんです」
そう言うやいなや、彼女の目からは涙が漏れ出す。さっきまでは離れていた所で彼女を見ていたが、近くでみると彼女は「美」がつくほどの少女だという事が分かった。
顔立ちは見事にバランスがとれており、否になる部分は一つもない。黒髪を肩まで伸ばし、前髪から覗く彼女の瞳はなぜか黒ではなく綺麗な蒼色をしていた。
その瞳は今や涙によって少し赤くはなっていたが、涙のおかげで潤んだ瞳はいっそう綺麗に見える。
「そ、それじゃ僕の背中に乗って!」
しばらく彼女の瞳に見とれていた自分に気が付き、照れ隠しに僕は彼女に背を向けて背中に乗るように支持をした。
彼女は僕の言葉に頷き、身を僕の背に預けようとしたその時――
『グルルルゥ』
骨の髄まで響き渡るような獣の声。そう『アイツ』だ。僕の背に乗ろうと仕掛けた彼女は化け物の声に「ひっ」と悲鳴を上げ、両腕を僕の首に回し、思いっきり抱きしめ……いや、締め付けた。
「ぐ、ぐるじ……」
この男には喜ばしい自体に僕は呑気に喜んではいられなく「うっ!」と、目の前にいる化け物に対してではなく、彼女に対しての呻き声を上げた。
「あっ、す、すいません!」
彼女は僕の呻きに自分の腕が僕の首を絞めていたことに気づき、ぱっと腕を放す。
開放感にさらされた首を摩りながら僕は大きく息を吸った。ほんと、化け物以前に、彼女に殺されてしまう。
「あの、大丈夫……ですか?」
背中越しから彼女が心配気に声を掛けて来た。