ICHIZU…@-2
「いってきます!!」
朝連に遅れそうな佳代は仕度をすると、朝ゴハン抜きで出かけようとした。すると、加奈が小走りで玄関まで追って来た。
「佳代!これ飲んできなさい」
「何!」
佳代は焦っているのか、語気を荒らげる。
加奈が持っていたのは一杯の牛乳だった。
「それじゃ部活もたないわよ!」
佳代は加奈の手から奪い取るようにコップを受け取ると、牛乳を一気に飲み干した。
「…じゃ、いってきます!」
空になったコップを加奈に渡すと、自転車をダッシュさせて学校に向かう。その後姿へ加奈が、声を掛けた。
「カヨー!バッグの中にも入れてるからー!部活前に食べるのよー!」
佳代は小さく手を上げる。
(まったく…毎日々寝坊ばっかりして)
そう言いながら、後姿を見る加奈の目は細くなり笑っていた。
加奈自身、覚えがあった。彼女もテニスで大学へ特待生で入り、国体の強化選手にまで選ばれたほどのプレイヤーだったからだ。
テニスは中学から始めた。某テニス・マンガに感銘を受けて。
その入ったテニス部にも朝練があり、加奈も、ちょうど今の佳代のようによくダッシュで学校に行ったクチだったのだ。
(まったく…悪いところが似ちゃって…)
佳代が見えなくなると、加奈は玄関から庭へとむかい、
「修!そろそろ準備なさい」
庭でバットを振っていた修は、“は〜い“と言って中へ戻った。
佳代を乗せた自転車が、勢いよく学校の校門をくぐり抜ける。その姿はかなり異様だ。前カゴにはカバン、荷台にはスポーツ・バッグ。背中にはリュック。これが彼女の毎日の荷物。
カバンには教科書やノート、スポーツ・バッグは部活に使うユニフォームやグローブ、スパイク。そして、リュックには水筒が2本。
「ふぃ〜っ、間に合った」
駐輪場に自転車を止めると、佳代はリュックから水筒を取り出すと、一口飲んだ。ここまで必死にコイできたから喉はカラカラなのだが、今、沢山飲むと昼間に差し支える。
佳代は水筒をリュックにしまうと、荷物を持って保健室に向かった。
保健室は彼女の更衣室変わりだ。野球部への入部を認めた時、監督の榊が困ったのが更衣室だった。
男子だけなら部室で構わないのだが、女の子をその中で着替えさせる訳にはいかない。そこで、榊は保健の先生に頼み込んだのだ。
保健室に入った佳代は腕時計を見た。集合時刻10分前。