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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…@-3

(ヤバッ!急げ)

佳代は剥ぎ取るように制服を脱ぐとスポーツ・バッグからユニフォームを取り出す。と、一緒に何か出てきた。

「パンだ!」

誰も居ない保健室に挙がる奇声。母親の加奈が入れてくれたレーズン・パン。

「さっすが!母さん分かってる〜♪」

佳代はそう言うと、パンを口に放り入れた。



「整列!」

キャプテンの川口が号令を掛ける。途端に部員達は、川口の対面に学年別で3列に並ぶ。

「すいませ〜ん!」

直後に佳代が走り込んで来た。口元はまだ動いている。
すぐに川口の怒号が飛んだ。

「澤田!遅いぞ。最近ちょっと多いから気をつけろ」

「すいません!」

帽子をとって川口に頭を下げる佳代。この一年で礼節も大分叩き込まれた。
佳代の入部が決まった日曜日。監督の榊は、彼女に内緒で母親に相談に来ていた。
榊は正直、佳代をどう取り扱っていいのか迷っていた。そこで、彼女の両親に会いに行ったのだ。

父親の健司は終始“監督にお任せします“だったが、母親の加奈は違った。

“監督。厳しくお願いします。技術的なモノより、礼節を特に。多少殴っても構いませんから“

加奈の言葉に榊は驚いた。近頃は、我が子の言葉を鵜呑みにして“体罰“を“暴力“ととらえて学校へ怒鳴り込んで来る“バカ親“の多い中、まったく逆の事を言っている。その点を榊が聞くと加奈は笑いながら、

「監督。私も部活をやってました。ただ、佳代の場合は違います。男子ばかりの中に入って行くんです。あの娘はまだ野球が“楽しい“と思ってます。でも、つき詰めて行けばすぐに“厳しさ“に変わります。その時、あの娘がちょっとでも怠惰な態度をとったら、いつでもクビにして下さい!」

これで榊の腹は決まった。男女の区別無く、佳代を指導すると。




「オマエたるんでるゾ」

佳代が列に入ると、となりの川口直也が小声で言った。彼はキャプテン川口信也の弟だ。直也の小言に佳代は、

「起きれなかった…」

「オマエ、今月6回目だぞ」

「ゴメン」

素直に謝る佳代に直也は、(ちょっと言い過ぎたかな)と横目で彼女を見る。が、言葉とは裏腹に、顔は怒っている。自身のふがいなさへの怒りだ。


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