ずっと、好きだった(3)-1
改札口に彼の姿を見付けたとき、驚きや喜びの中で、ごく冷静に‘良かった’と思った。
彼が連絡無しで突然会いに来てくれたことは、私にとって良かった。
彼がそうした理由はわからないが、断れるタイミングを私に与えてくれなかったことは、結果としてとても都合が良かった。
きっと、彼が前以て電話を入れてくれたら、私は断るべきと知りながら、断ることが出来なかった。
それはもう、秀司に対する完全な裏切りだ。
そして、悠紀のもとに足を進めながらこんなことを考えている、この状態自体がもはや裏切りだということには、気付かないふりをした。
「ごめん」
彼の第一声はそれだった。
気を抜くと、泣いてしまいそうだ。
あるいは、その広い胸に抱き着いてしまうかもしれない。
もう、戻れない。
三日ぶりに彼を見て、私はそう思った。
「いつから待ってたの?」
私の問いに、彼は少し考えた後、『ついさっき』と答えた。
彼に嘘をつかせるのは、これで何度目なのだろう。
こうやってずっと、私は彼に守られてきたのだ。
「ノリ」
「…ん」
「時間、ある?」
声を出すと震えてしまいそうで、私は静かに頷いた。