青い世界を散歩する。-1
空を見るのが好きだった。
ただなんとなく好きだった。
儚く萌えるあの空はしかし、僕には笑いかけてくれなかった。
それでも僕は、空が好きだった。
やぁ、ハロー、グッバイ。
僕は、青い世界を散歩する。
『青い世界を散歩する』
ちょうど昨日が終わり、今日が始まる時刻に眼が覚めた。
春の余韻に浸る空が明るみだし、手付かずの朝が始まる。
五月特有の気だるさの多い空気も今日はましで、朝日が山から顔を出す景色はとてもキレイに見えなにかしらと僕は感動を覚えた。
きっとあれにも意味はある。
僕と違って。
真理。
たぶん間違っているだろうけど、そんな気がした。
遠くで雁が飛んでいた。
さぁ、今日は何をしようか。
◆
眠気を拭うブラックコーヒーに口をつけ、紙の上の文字の羅列に眼を通す。 新聞などさっぱりなのだが、今日は何故か読んでおく必要性を感じた。
意味はない。
ただそう思っただけだ。
たぶん、こんな事だろうから日頃も上手く行かない事ばかりなのだろう。
僕は行動に、なにかと意味をつけたがる人だった。 それ自体に意味はないので上手く説明はできないが、人の話しによれば“思春期特有の感情”らしい。
ばかばしい。
僕はもう一回、ブラックコーヒーをすすった。
苦い液体が口内を支配する。 この感じは嫌いではなかった。
早く目覚めたというのに既に時刻は八時を回り、悲しきかな学生にとっての“奈落”、学校へと向かう時間になった。
特別学校が嫌いな訳ではないが、登校時の友達との馴れ合いが好きではなかった。 今でも自転車通学にしようか迷っている最中で、今日も僕の隣には君がいた。
「おはよう。 今朝は早いのね? 遅刻常習犯のアナタがなぜかしら。」
はなにかけた様に君は言う。
『別に意味はないよ。』
とりあえずそう言っておいた。 コーヒーの味がまだ口内に残っている。
「そういう時は、嘘でも私に会いたいからって言うものよ。」
どこか冗談に聞こえなくても僕は笑った。
笑った僕を見て君も笑った。
『嘘でいいなら。考えとくよ。』
「そういう時は口に出さないの。」
やはりこの時間は嫌いだ。