ツバメE-2
「あははは!」
「燕くん可愛いね!」
「よく言われます」
合コンは最高潮に盛り上がっている。
今夜の相手は大手商社のOL。
彼らはIT社員の卵ということで、なかなかウケがいい。
「燕くん連絡先おしえてー!」
「あっ!あたしもー!」
「はーい」
「ちえっ、燕は今日も人気だな」
「なあ、燕よ、椿芽ちゃんと別れたほうがいいんじゃね?」
帰りの電車内で、桜実は切り出した。
「なんで?」
「お前、毎回合コンで人気じゃん。別に放置してまで椿芽ちゃんと付き合わなくても、合コンで引っ掛けた女でいいじゃん」
「……」
「……」
燕は答えなかった。
「あー…なに考えてんだ俺は…」
桜実は車を走らせながら呟く。
「椿芽ちゃんのこと……好きになるなんてな」
「ふう」
ふと懐かしくなり、久し振りにタバコを手に取って軽く吸う。
いやなことを考えた。
椿芽がいなくなる?
嫌だ。
所詮、俺は強がっている人間なんだから。
椿芽が離れないんじゃない。俺が離さないんだよ。
じゃあ合コンなんかすんなって?
それはムリ。
合コンは趣味だから。
椿芽は勘違いしてるかもしれないけど、お持ち帰りなんてしたことないし、浮気なんて以ての外。
アドレス帳が増えるのは、ほとんど相手がムリヤリ入れてくるからなのだ。
消せばいい話だけどね。
なんて、考えてみるけど、ほとんど意味はない。
矛盾してるのは重々承知だ。
でも椿芽は……あんなだけど、愛してるんだ。
気付けばタバコの火は、フィルターの部分まで迫っていた。