舞子 〜愛する人〜-3
――静かに――
舞子の部屋のドアを開ける。
カーテンからわずかに射し込む光が、ぼんやりと部屋の中を照らしている。
年頃の女にしては殺風景な部屋。 でも甘い・・・いい匂いがする。
俺は音を立てない様にベッドに近付き、静かに寝息をたてる舞子を見下ろす。
伏せた長い睫・・・
静かにベッドに腰を下ろし、前髪をそっとかき上げた。
「ん・・・」
舞子の眉間に皺が寄る。
「舞子・・・」
頬を撫でながら、そっと耳元で囁く。
甘い香り・・・・・・眩暈がするほどの・・・
「ん・・・隆史・・・?」
舞子の呼ぶ名前は、俺の名前ではないけど・・・
「そうだよ」
そう言うと、舞子は目を閉じたまま幸せそうに微笑んで、再び深い眠りに落ちていった。
暗い部屋で、そっと舞子の頬を撫でながら、彼女の寝息が整うのを聞いていた。
この部屋で、
この部屋で、舞子は隆史に抱かれたのか
あんなに甘い声を出して・・・
熱っぽい瞳で隆史を見つめたんだろうか
嫉妬で――
悔しくて、悔しくて、やり場のない怒りがこみ上げてくる。
静かに眠る舞子。
今だけ・・・この瞬間だけ・・・
そっと近付き、俺は舞子の耳元で囁く。
「舞子、愛してる」
決して口にしてはならない言葉。
願っても手に入らない女。
死ぬほど愛してる女。
俺は静かに立ち上がり、部屋を出た。
張り裂けそうに痛む 胸を 押さえながら ――