シスコン『第八章』-2
「オイあれ、四世秋冬だぜ……?」
「あいつが?姉ちゃんが大好き〜なんだろ?気持ち悪……。」
あの日の貼紙を見た一年が、秋冬を見て話している。
秋冬はもちろん、無視だ。
「秋冬君……。」
「気にすんな。早く行って…ほら、早く帰りたい。」
「春夏ちゃんに会いたいから?」
秋冬は千里を見た。千里はニヤニヤしている。
「…そうだな。姉貴に会いたいな。」
秋冬の顔は真っ赤だ。
「開き直る事も大事っすよ。」
千里はそう言って、秋冬の背中をたたいた。
「千里がそうくるとは思わなかった。」
秋冬は笑った。
会議室に到着し扉を開けると、そこにはすでに何人か集まっていた。
「こんにちは〜。」
千里が挨拶する。会議室にいる生徒のえりにはだいだい色の校章をつけている生徒と、緑色の校章をつけている生徒がいる。
だいだい色は二年生、緑色は三年生だ。
「…ちわっす。」
秋冬は小さく挨拶した。だいだい色の校章、二年生が二人に近付く。
「待ってたよ!今年は人手が足りなくてね……あ、オレの名前は東優(あずまゆう)。漢字で二文字なんだ。」
東はそう言ってニカッと笑った。
「あそこで本を読んでるのが西田で…、あそこで寝てんのが北川、奥で隠れてゲームしてるのが南野。今言ったのは全員二年生だから。」
秋冬は心の中で笑った。四人の名前に、東西南北のどれかがついているから。
「三年生はあっちのほうだから。オレは三年生苦手なんだ。あの…その…まぁ頑張って!」
東は西田のほうへ行った。
二人は適当な席に座る。北川が近付く。
「初めまして。私は北川舞。」
「あ、初めまして。」
秋冬は会釈をした。
「…千里、久しぶり。元気にしてたかしら?」
北川は千里を見つめている。
「…まあ、ね。そっちは?」
「…ぼちぼちでんなー。」
秋冬はその言葉を聞いたが、笑えなかった。声に恐ろしく感情がこもってなかったから。
「…そう。なら、よかった。…文化祭終わるまでよろしく。」
千里は千里で、いつもと明らかに違う。
北川は会議室を出た。
「……千里、知り合い?」
「…あ〜…、まあ……知り合い?うーん?」
秋冬は首を傾げた。
「結局なに?」
「…内緒だからね。特に、柚木さんには。」
「お…あぁ。」
千里は咳払いをした。秋冬は何故か姿勢を正した。
「…元カノ。」
「…はぁ!?」
「中学時代のね。中学が同じだったんだ。」
「お前…この前メールで柚木さんが初めての彼女って言ってなかったか?」
「ああ……あれ嘘。」
秋冬は千里を見た。
「ま…お前の人生だしな…。どんぐらいの期間付き合ってたんだ?」
千里は指折り数える。
「…一年と半年。」
「長っ!!」
秋冬は驚いた。
「こら、声が大きいぞ。まだ会議始まってないとはいえ、少しは考えような。」
突然目の前に現れた三年生に二人は驚いた。
「それよりも、あの北川舞の元カレ…?興味あるんだが。」
「話す程の事じゃありませんよ。先輩?」
三年生は千里を睨んだ。千里は目をそらさない。秋冬は二人を交互に見て、思った。
姉貴みたいにバックレればよかった、と。
「…幾間千里か。覚えとくわ。」
三年生は遠くに座った。千里は三年生を見ている。
「なあ、嫌な予感がしてならん。」
秋冬が言った。
「激しく同意。帰りたい気持ちでいっぱいです。」
文化祭実行委員会。一癖も二癖もありそうだ。